6.編集後記
SNSを巡る騒動や規制など世間が喧しい。コロナ収束後、筆者がオンラインでなく、大学(大学院を除く)で教壇に立つ機会が多くなった。教室に多くの学生が受講しているが殆どがスマホに熱中している。講師の話す用語を調べていると思いきやゲームだったりする。そこで海外事情を知るべく色々聞いたり探したりしてみた。欧米諸国のSNSに関する報道を見ていると実に真面目に取り組んでいるのがわかる一方で、日本の対応が遅れている、又は、無知を装ってやる気がないように見える。
フランスでは去年、SNSの運営会社に対して、保護者の同意がない限り、15歳未満の子供のアクセスを制限するよう義務づける法律が制定された。米国の一部の州でも、未成年のSNS利用を規制する法律を制定していて、ユタ州などでは未成年がSNSを利用する際には保護者の同意が必要だとしている。ノルウェーでは現在、15歳未満の子供がSNSを利用することを禁止しようという議論が進んでいる。一方で、子供の権利擁護の団体などは国連の「子供の権利条約」で定める、子供の表現の自由や情報を得る権利を妨げることにも繋がるとして、SNSへのアクセスを完全に禁止することには問題があると指摘している。
EUヨーロッパ連合は、一昨年、SNSの運営会社などに対して、未成年を対象にした閲覧履歴をもとに広告を表示するいわゆる「ターゲティング広告」などを禁止する法律を制定した。英国でも去年、インターネット上の有害な情報から子供を守ろうという法律が成立した。
つい最近では、豪州アルバニージー首相は、記者会見を行い「今回の法律で親と子供の会話が変わり、その変化はオーストラリアの子供達にとって害を少なくし、より良い結果をもたらすことになる」として、子供と保護者のための法律だと述べた上で「SNSの運営会社が社会的な責任を果たすことを担保する世界でも先進的な取り組みだ」とし、意義を強調し、運営会社に対応を求めていく姿勢を示している。この法律は、SNSの運営会社に16歳未満の子供が利用できないような措置を講じることを義務づけるもので、違反した場合は最大で4950万豪ドル、日本円でおよそ49億円の罰金が科される。
と言うのは、オーストラリアでは近年、子供達がSNSにのめり込み、日常生活や心の健康に悪影響が出ることへの懸念が高まっているほか、悪質ないじめにあったり、性被害にあったりする事件が相次ぎ、保護者を中心に規制を求める声が高まっていたからだ。
また別の報道では、夏休み明けの9月に新学年度を迎えるフランスでは、全国の中学校の内199校において、スマホとの距離をとる「デジタル休止」の試みを開始すると、ベルベ教育相が8月27日発表した。「オンライン暴力の予防」と「デジタル画面との接触時間の制限」を目的としており、テスト期間を経て2025年1月から全国的に適用する予定となっている。このフランスでは、既に2018年から小中学校でのスマホの使用は法律で禁止されているが、携帯自体は禁止されていない。そのため、本来ならば校内ではオフにしておくべき電源をオフにしていない生徒も少なくなく、学校側とのいたちごっこになっているのが実情であるため今回の「デジタル休止」テストには、この現状を打破する期待が寄せられる。
そう考えると我が日本はどうか。国会で議論にさえなっていないように思えるが、漸く政府自民党が「闇バイト」対策に本腰を入れ出した。しかし、その背景は、首都圏など各地で相次ぐ「匿名・流動型犯罪グループ」による強盗などの凶悪事件への対策強化などについてが発端というから周回遅れの印象だ。
そして、喫緊の対策として、秘匿性の高いアプリへの対応などをあげて、今後、警察庁など関係省庁とも協議し、来月上旬を目途に、政府に「闇バイト対策」の提言を提出すると言うから益々欧米との差が広がっていくだろう。
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月報編集室:主筆 上原 修 CPSM, C.P.M. JGA
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