1. 米製造業景況感指数:製造業回答者の声
Manufacturing PMI® at 50.3%
February 2025 Manufacturing ISM® Report On Business®
- New Orders and Backlogs Contracting
新規注文と受注残ともに減少
- Production Growing and Employment Contracting
生産増加と雇用減少
- Supplier Deliveries Slowing
サプライヤー出荷遅延
- Raw Materials Inventories Contracting; Customers’ Inventories Too Low 原材料在庫縮小;顧客在庫過少
- Prices Increasing; Exports and Imports Growing
価格上昇;輸出と輸入増加
【解説】
米サプライマネジメント協会(ISM)は3月3日、2月の製造業景況感指数を発表した。製造業景況感指数は50.3と、前月から0.6ポイント低下し、ブルームバーグの市場予想(50.6)を下回った。基準値である50はなお上回っているものの、関税引き上げに伴うコスト上昇懸念を受けて受注や雇用が低下するなど、前月まで見られていた回復の兆しは大きく減退し、ネガティブな内容が多くなっている。項目別では、指数の構成要素のうち新規受注(48.6)、雇用(47.6)が再び50を下回った。生産(50.7)は基準値をわずかに上回っているものの、前月から低下した。今回、総合指数が基準値を上回った主な要因は供給(54.5、注1)によるものだが、これは「港湾ストや追加関税の可能性を見越した顧客からの早期納入依頼にサプライヤー側が苦慮する中、誰が現状の関税を負担するかを供給側と企業間で交渉し、納期が遅れたため」と説明されており、この指数が本来意図している需要増による配送遅延のようなポジティブな要因による上昇ではない。また、指数の構成要素以外では、仕入れ価格(62.4)が前月(54.9)から大きく上昇したことが注目される。鉄鋼・アルミニウム・銅など関税政策の影響を受けやすいカテゴリーや、プラスチック、天然ガスなど第2次トランプ政権下で見込まれる規制緩和に関連するカテゴリーなどで価格が上昇しているもようだ。業種別では、景況感が拡大と回答した業種は全体で10業種、産出額の大きい6業種では4業種だった。ISM製造業調査委員会のティモシー・フィオレ会長は結果について、「需要は減退し、生産は安定化、企業が新政権の関税政策による最初の運用ショックを経験する中で人員削減は続いた。関税への懸念により価格上昇が加速し、新規発注の積み残し、サプライヤーの納品停止、在庫への影響が発生している」として、トランプ政権による関税政策が今回の結果を大きく左右する要因になったとの見方を示した。企業からのコメントにも、「関税政策をめぐる不確実性のため、顧客は新規発注を停止している」(輸送機器)、「鉄鋼・アルミニウムに対する関税引き上げに伴う市場の不確実性のため、顧客は長期的な取引量をコミットすることにとても消極的になっている」(一次金属)など、関税政策による受注への影響を指摘する声が目立つ。トランプ政権はさまざまな関税措置を検討中で、関税政策の影響を懸念する受注控えの動きは当面続く可能性が高そうだ。
米ISMサプライマネージメント製造業景況感指数 |
製造業約350社の購買担当者に対し受注や生産状況をアンケート調査により聞き取りし、月初めの第1営業日(その2日後に非製造業を公表)に公表している統計。日本の企業短期経済観測調査(日銀短観)に似た統計といえます。米主要統計の中でも最も早く月初めに発表されるため、市場関係者の注目度が高く、景気の先行指標とされています。一般に好不況の判断の境目とされる50%を割れると景気後退で、50%を超えると景気拡大と判断されます。GDPとの関連性を持たせるために2008年1月分の統計より算出方法が変更され、現在は「新規受注・生産・雇用・入荷遅延・在庫」の5項目(比率はそれぞれ20%)につき、「増加、同じ、減少」の回答結果をもとに算出する。民間調査機関13社の予測値(中心値)が前もって出回るので、リリース時にはそのギャップも重要になります。 |
製造業回答者の声WHAT RESPONDENTS ARE SAYING …
1 | Chemical Products 化学製品 | メキシコとカナダからの製品に関する関税環境は、当社の顧客の間に不確実性と不安定性をもたらし、これらの国々からの報復措置への露呈を増大させた。 |
2 | Transportation Equipment 輸送機械 | 関税に関する不確実性の結果、顧客は新規注文を一時停止している。関税がどのように実施されるかについて、政権から明確な指示がないため、ビジネスにどのような影響を与えるか予測するのが難しい。 |
3 | Food, Beverage & Tobacco Prod 食品・飲料・煙草 | インフレと価格圧力が 2025 年の見通しを引き続き不透明なものにしている。当社顧客の購買意欲が低下し、代替品を探しているため、価格設定による数量への衝撃が見られる。 |
4 | Computer & Electronic Products コンピュータ・電子製品 | 関税の影響は、製造業と原材料供給全体への影響は最小限である。食品医薬品局、環境保護庁、国立衛生研究所などの主要機関における米国政府支出の制限が、一部の受注を遅らせている。 |
5 | Machinery 一般機械 | 関税の導入により、当社製品の価格が上昇している。サプライヤーからの値上げが相次いでいる。大半は人件費の上昇を指摘している。ベンダーは生産能力の空きを示している。インフレ圧力が懸念される。当社は、新関税が当社事業にどのような影響を与えるか、真摯に取り組んでいる。 |
6 | Fabricated Metal Products 金属加工製品 | ビジネスはまだ低調だが、6~9 ヶ月先には需要改善の兆しもある。鉄鋼と鉄屑スクラップのコストは上昇しており、何処まで上がるか判断するのは時期尚早である。 |
7 | Electrical Equipment, Appliances & Components 電気機器・家電・部品 | 新規受注は12月に持ち直した後、好調を維持している。関税に関する不透明感から、今は売上が堅調だが、支出には慎重になっている。 |
8 | Primary Metals 一次金属 | 顧客の数量は2024年より良いようだ。しかし、鉄鋼/アルミ輸入関税案による市場の不透明感から、顧客は依然、長期的な数量の公約を非常に躊躇し消極的になっている。 |
9 | Plastics & Rubber Products プラスチック・ゴム製品 | 関税の影響について社内で分析中だが、具体的なものは未だない。一般的な業況は引き続き低調だ。自動車の国内在庫が増加しているため、耐久消費財サイドの見通しは、より一層悲観的になっている。 |
10 | Nonmetallic Mineral Products 非金属鉱物製品 | 経営陣は、関税の影響を予測するため計画の大筋を作成するよう求めている。経営者達は、24時間以内に勝手な推測に等しい変数の数字を求めている。面白い時代になったものだ。 |