2024年9月報告

1. 米製造業景況感指数:製造業回答者の声

Manufacturing PMI® at 47.2%

August 2024 Manufacturing ISM® Report On Business®

  • New Orders and Backlogs Contracting

新規注文と受注残減少

  • Production and Employment Contracting

生産・雇用減少

  • Supplier Deliveries Slowing

サプライヤー出荷遅延

  • Raw Materials Inventories Expanding; Customers’ Inventories Too Low

原材料在庫拡大;顧客在庫過少

  • Prices Increasing; Exports and Imports Contracting

価格上昇;輸出・輸入縮小

【解説】

米サプライマネジメント協会(ISM)が3日発表した8月の米製造業景況感指数は47.2とダウ・ジョーンズまとめの市場予想(47.9)を下回り、好不況の分かれ目となる50も5カ月連続で下回った。新規受注と生産の低迷が重荷となった。指数の50割れは、米製造業が足元の経営環境に懸念を強めていることを映す。3月には50を超えたが、2022年11月以来、22カ月のうち21カ月間は不況水準となっている。在庫を示す指数の改善を受けて前月からは0.4ポイント改善した。一方で新規受注は2.8ポイント、生産は1.1ポイント、前月からそれぞれ低下した。ISMで調査を統括するティモシー・フィオレ氏は「金融政策と大統領選の不透明感から、企業は設備投資や在庫投資に消極的になっており、需要が引き続き低迷している」と指摘する。調査対象の企業からは「人員削減などが始まり、事業活動の鈍化が目立つ。将来の成長に対する楽観的な見方が打ち砕かれた」(化学製品)、「事業が冷え込んでおり、選挙が終わるまで回復は期待できない」(紙製品)など先行き不透明感を懸念する声が多く聞かれた。PNCファイナンシャル・サービシズ・グループのシニアエコノミストは「米製造業は高金利、住宅市場の低迷、消費者のインフレ疲れという持続的な組み合わせを受けて(成長が)鈍化している」と分析。「新規受注が明らかに停滞しており、新たな製造活動や雇用は少なくとも年内一杯、経済活動の足枷となるだろう」との見方を示した。

米ISM製造業景況感指数
製造業約350社の購買担当者に対し受注や生産状況をアンケート調査により聞き取りし、月初めの第1営業日(その2日後に非製造業を公表)に公表している統計。日本の企業短期経済観測調査(日銀短観)に似た統計といえます。米主要統計の中でも最も早く月初めに発表されるため、市場関係者の注目度が高く、景気の先行指標とされています。一般に好不況の判断の境目とされる50%を割れると景気後退で、50%を超えると景気拡大と判断されます。GDPとの関連性を持たせるために2008年1月分の統計より算出方法が変更され、現在は「新規受注・生産・雇用・入荷遅延・在庫」の5項目(比率はそれぞれ20%)につき、「増加、同じ、減少」の回答結果をもとに算出する。民間調査機関13社の予測値(中心値)が前もって出回るので、リリース時にはそのギャップも重要になります。

製造業回答者の声WHAT RESPONDENTS ARE SAYING …

1Chemical Products 化学製品企業活動の鈍化が顕著であり、人員削減と生産の合理化が始まった。将来の成長に関するこれまでの楽観論は破たんした。
2Transportation Equipment 輸送機械請求書発行は堅調を維持しているが、受注が大幅に減速しているため、受注残は半減している。第4四半期から2025年にかけて受注が回復することを期待しているが、第3四半期の受注は引き続き低調に推移すると予想している。
3Food, Beverage & Tobacco Prod 食品・飲料・煙草上半期の販売数量は前年同期比で減少し、遅い開始となったが、現在は前年同期比で緩やかに増加し、より着実な成長を遂げている。
4Computer & Electronic Products         コンピュータ・電子製品業績見通しは良好。電子材料減速からの回復は下半期に向けて力強い。
5Machinery           一般機械新規受注は低調だ。興味深いことに、受注は減少しているが、引き合いは増加している。顧客が述懐するに、設備購入のための資金が承認された一方で、2024年の第4四半期までプロジェクトを保留するよう指示された。これは選挙を巡る不確実性を示しており、年末は堅調に推移し、2025年に向けて受注残が増加すると期待している。
6Fabricated Metal Products        金属加工製品当社の受注水準は緩やかで着実な減少傾向にあり、この傾向は年末まで続きそうです。当社も自然減と補充要員の不採用で事業を縮小しているが、これまで一時帰休は行っていない。明るい材料としては、幾つかの顧客プログラムによって部品の注文が増えたことであり、非常に忙しい生産地域もあれば、仕事が少ない生産場所もある。可能な限り人員を再配置している状態だ。
7Miscellaneous Manufacturing その他の製造業新規受注は引き続き堅調で、その結果、在庫が僅かに減少している。サプライヤー納期は、特定の分野で再び上昇しつつあるようだ。
8Paper Products 紙製品ビジネス景気が冷え込んでおり、当社は、選挙が終わるまで回復の期待ができない。2025年の予算を組み立てるにあたり、エネルギーに関する環境コストの追加について深い懸念を持ち続けている。
9Primary Metals 第一次金属  注文台帳は今のところ堅調を維持している。当社は、米国の自動車販売の減速に備えている。時間給従業員の雇用が難しいので作業歩調を維持するため残業をしている。工場での仕事がこなせないため、数時間で辞めていく者も数人いる。
10Wood Products   木材製品高金利が、家具、収納棚、床板、装飾品などの大規模の裁量性の支出に対する消費者支出を切り詰めており、これが当社の業界の販売力に影響を与えている。その一方で、住宅や改築に対する鬱積した需要は高まりつつあるようだ。金利引き下げは、今年衝撃を与えるほどすぐには起こらないかも知れない。