2.編集後記
新年早々から二カ所で出講要請を受けていたため、年末年初は、その準備に追われていたところ、令和6年、元旦早々、能登半島地震が発生し、翌日には日航機の羽田空港事故と続き、令和6年の年頭に影を落とす事態が発生し心苦しかった方も多くおられよう。
2月に入っても海外、東欧と中東の戦争や紛争が止むことなく続いている。終わりが見えない、また先が見えないほど不安なことはない。
今年初めての月例講習会では「Controlling Unmanaged Procurement Spend at Midsize Companies中堅企業における未管理(管理されない)購買調達支出の統制」というテーマがあり、皆で議論した。このテーマも某企業研修で話し合ったことだが、外資系でもJTC(Japanese Traditional Big Company伝統的な日本の大企業)と同様に支出管理(spend management)ができていないことを垣間見た。5W1Hという旧い言葉「六何の法則」を思い出すまでもなく誰も責任を取らないばかりでなく、同じ社内でも誰が何処で何をしているのか皆目わからない状態が続いていることに驚いたのである。上級管理職からは、在宅勤務が増えてきていることも要因だと言っていたが、それ以前の問題であろうと思う。特にJTCからいきなり外資に様変わりした企業ほどそう言えるようだ。つまり、外見が外資、中身はと言うと上半分が外国人経営者、下半分が日本人社員で占められている会社のことだ。
グローバル企業が叫ばれて久しいが、今後は、恐らくこの種の企業体が増えてくる予感がする。上半分に位置する外国人の多くが欧米でMBAを取ってきた人脈で占められているため互いに意思疎通が円滑だが、逆に下半分(いわゆる叩き上げ、または中途採用の社員)には通用しないとも言える。意思疎通こそ透明性の一丁目一番地だと思うのだが、上半分幹部社員が横文字のコミュニケーションを多用するばかりで全社としての一体感がなく、また実態が伴わないという現実がある。
前述の支出管理(spend management)に話を戻すと、管理されていない支出unmanaged spend には、過払い、法的要件の不履行、詐欺、横領、背任、更に偽造などの多くの不適切極まるリスクがある。これらのことから、支出管理を強化し、管理の重要な要素である支出の可視性spend visibility(これは正に意思疎通の透明性に繋がる)を向上させる必要があるのではないか。お金の行き先がわからなければ、企業は支出を統制できないのは当然である。企業が支出の可視性を改善し、方針と手順への「コンプライアンス」(国や関係省庁の法令、また企業内の規則、社会倫理の遵守を意味する)を確保することができれば、その支出を管理するために古典的な支出管理技術を採用することができるのである。
現下の政界を見ると裏金問題が日に日に拡大している。この世界こそ、支出管理を真面目にやるべきではないだろうか。前述した5W1H即ち、When(いつ) Where(何処で) Who(誰が) What(何を) Why(何故)How(どのように)したのか。 説明責任という言葉はもはや聞き飽きたと言うほかないが、「六何の法則」に則って明確に説明できる政治家が早晩出てくることを望むものである。
月報編集:主筆 上原 修 CPSM, C.P.M. JGA 特定非営利活動法人