2022年1月報告

5. 内閣府景気ウォッチャー調査

V 内閣府景気ウォッチャー調査

12月の現状判断DI(季節調整値)は、前月差0.1ポイント上昇の56.4となった。家計動向関連DIは、飲食関連等が低下したものの、小売関連が上昇したことから上昇した。企業動向関連DIは、製造業等が低下したことから低下した。雇用関連DIについては、上昇した。12月の先行き判断DI(季節調整値)は、前月差4.0ポイント低下の49.4となった。家計動向関連DI、企業動向関連DI、雇用関連DIが低下した。なお、原数値でみると、現状判断DIは前月差0.1ポイント上昇の58.6となり、先行き判断DIは前月差5.1ポイント低下の49.5となった。

今回の調査結果に示された景気ウォッチャーの見方は、「景気は、新型コロナウイルス感染症の影響は残るものの、持ち直している。先行きについては、持ち直しが続くとみているものの、コスト上昇等や変異株をはじめ内外の感染症の動向に対する懸念がみられる。」とまとめられる。

※地域の景気に関連の深い動きを観察できる立場にある人々の協力を得て,地域ごとの景気動向を的確かつ迅速に把握し,景気動向判断の基礎資料とすることを目的とする。調査は毎月,当月時点であり,調査期間は毎月25日から月末である。本調査業務は,内閣府が主管し,下記の「取りまとめ調査機関」に委託して実施している。各調査対象地域については,地域ごとの調査を実施する「地域別調査機関」が担当しており,「取りまとめ調査機関」において地域ごとの調査結果を集計・分析している。

2.物流・購買・調達・サプライチェーン関連記事抜粋:令和4年12月1日~12月31日

 主題概要
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≪用語解説:記事内の用語と企業を確認しましょう≫

グリーン水素
水を電気分解し、水素と酸素に還元することで生産される水素。この水素を利用し、酸素を大気中に放出することで、環境への悪影響を与えずに水素を利用することができる。電気分解には電気が必要だが、それには電力が必要だ。グリーン水素を作るための工程は、風力や太陽光などの再生可能エネルギーを利用することで副産物としての二酸化炭素を排出させることなく、水素を製造することができる。 ブルー水素とは、天然ガスや石炭等の化石燃料を、蒸気メタン改質(Steam Methane Reforming)や自動熱分解(Autothermal Reforming)などで水素と二酸化炭素に分解し、二酸化炭素を大気排出する前に回収する方法。二酸化炭素を回収することで、グリーン水素と同様に、温室効果をゼロにすることができる。 グリーン水素 vs ブルー水素:将来の水素エコノミーを実現する上で、グリーン水素とブルー水素のどちらを優先的に扱うかは、コストの面で比較される。両者のコスト比較研究では、グリーン水素の方がブルー水素よりも高価であり、それは再生可能エネルギーを利用して水から水素を製造するプロセスである電気分解のコストが原因と言われる。具体的には、電気分解によって生成された水素(グリーン水素)は、その生成に使用される電気よりも常に高価であるのに対し、天然ガスは電気に変換するよりも大幅に低いコストで水素に変換できるからだ。世界の電気分解能力は限られているうえ、水素の生産量が増えると明らかにグリーン水素のコストがブルー水素より高くなるが、グリーン水素製造コストは、2015年から2020年までに40%低下しており、2025年までに更に40%低下すると予想される上、業界の専門家の多くは、電気分解能力を大幅に増やせば、今後10年間で約70%のコスト削減になるとも予想しているため、EUでは、ブルー水素を行わず、グリーン水素を普及させることを政策として掲げている。
代替肉
動物を屠殺して得る食肉の代替として、大豆など植物性原料を使い、肉の食感に近づけた食品である。世界人口の増加や畜産に伴う環境負荷、動物倫理などの解決策として注目されている。プラントベースドミート(PBM)、フェイクミート、大豆ミート、大豆肉、ソイミート(soy=大豆)、疑似肉、植物性タンパク、アナログミート、ダミーミートなどとも呼ばれる。本物の食肉を避けるベジタリアンやヴィーガン向けのみならず消費者一般に普及しつつあり、日本でも2019年頃から代替肉は拡がりを見せてきている。ユーロモニター・インターナショナルによる世界市場調査では、世界の消費者の4人に1人が肉の消費量を削減している。2020年時点での代替肉は割高となっているが、市場が拡大するにつれて価格は安くなることが予想される。コストコは2024年までに少なくとも一つの代替肉製品は肉と同等の値段、あるいはそれより安く販売すると約束している。また、本来の肉でも動物の飼育を伴わない培養肉(人工肉)の開発も進んでいる。
TCL科技集団股份有限公司 TCL Technology
広東省恵州市に本社がある電気機器メーカー。TCL集団は携帯電話、パーソナルコンピュータ、家電機器、照明、電子媒体を中国内外に販売している。TCLは深圳証券取引所に上場している。TCLは1981年、5000元の融資を受け恵陽区電子工業公司と香港企業の合弁でTKK家庭電器有限公司が成立し始まった。当初は磁気テープの製造・販売から始まった。1989年、電話機の生産販売量が全国一位になる。1990年代に入り、TCLは急速に成長を遂げ、過去12年の間に年平均42.65%の成長を遂げ、中国で最も成長が早い企業となった。1992年、「王牌」ブランドの大型カラーテレビを開発、市場から広く認められる。1993年、TCL通訊設備股份有限公司が深圳証券取引所に上場。1996年、香港の陸氏公司のカラーテレビ事業を買収し、国有企業が香港企業を買収し、国有企業のブランドを継続する例の第一号になる。「王牌」テレビが国内3強に名を連ねる。1997年、国有企業が政府から権利を授けられ、経営をするというケースの先駆けとなり、TCL集団公司を設立する。1999年、携帯電話事業に進出。TCL国際控股有限公司が香港で上場。ベトナムへ進出。2002年TCL集団股份有限公司、登録。携帯電話事業が大成功を収め、販売量600万台を突破した。2004年1月、TCL集団は上場を果たした。同じく2004年、TCLはフランスのトムソンとTCL-トムソン電子有限公司を共同出資で設立してトムソンの登録商標であるRCAを取得し、世界最大のテレビ製造業者に躍り上がった。また、これまでにも日本の松下電器や米国のインテルなど世界中の大手企業と相次いで提携し、高度な技術を積極的に取り入れることで大手メーカーとしての地位を築いてきた。2004年頃から、TCLは中国国内の価格競争に直面し、株価が30%下落したり、薄型テレビへのシフトが遅れた。また、2004年終わりには、トムソンはTCLのライバルメーカーである康佳グループの株式を一部取得し、市場を驚かせた。2005年後半になると、フィリップス中国現地法人がTCLの株式の7%を購入し、保有比率第3位の株主となった。2006年初めには、TCLは世界10国に本社を設置し、ベトナム・インド・ドイツに進出している。2013年、ハリウッドの名所であるグローマンズ・チャイニーズ・シアターの命名権を獲得してTCL・チャイニーズ・シアターに改称。2014年には、メキシコにある三洋電機の液晶テレビ工場を1522万ドル(約15億円)で買収することが明らかになった。同工場は「SANYO」ブランドで小売り世界最大手のウォルマート向けに液晶テレビを製造しているが、買収後も三洋は同工場にウォルマート向けテレビの生産を委託する 。2020年6月19日、ソニー・パナソニックの統合事業JOLEDと資本業務提携契約を締結。テレビ向け大型有機ELディスプレイの共同開発を開始。
北京首創生態環保集団股份有限公司(北京キャピタル)
中国の水インフラ事業大手である北京キャピタルは、中国山東省での水インフラ事業を拡大する。住友商事は北京キャピタルと事業投資会社Capital Summit Environment Investment Co.,Ltd.(キャピタルサミット)を山東省に設立した。2010年から三社で共同運営している下水処理場三カ所に加え、北京キャピタルが保有する既存処理場29カ所を合わせ、計32カ所の下水処理場(下水処理水量 約130万トン/日)を共同で運営していく。中国では、経済成長による都市人口の増加や生活水準の向上、それに伴う環境保護意識の高まりから国を挙げて水環境整備を推進する方針もあり、水インフラの重要性が一層高まっており、キャピタルサミットがさらなる事業拡大を計画している山東省では、2030年までに給水人口が現在と比べて約1,000万人増加すると言われる。住友商事グループは、現在、中国、ブラジル、英国、中東各国などで約2,000万人の人々に対して、上下水に関わるサービスを展開し、水インフラ事業の実績と経験を積み重ねてきた。北京キャピタルは、環境インフラ総合サービスを展開する北京市政府傘下の国有企業で中国水インフラ業界のリーディングカンパニーとして、中国28の省と100都市以上において5,000万人を越える人口を対象に上水供給・下水処理サービスを提供しており、2021年3月時点では、サービス提供人口ベースで世界6位の水インフラ事業者となった。キャピタルサミットは、水処理サービスと新規事業開発に関する三社の知見を生かし、山東省を中心に水インフラ事業の案件開発に取り組み、2030年までに下水処理水量を現在の2倍に拡大することを目指す。
供給制約
新型コロナウイルス感染拡大に伴う生産の停滞や新規需要の発生は供給制約の引き金となり、食料や素材の不足に繋がった。脱炭素の進展は化石燃料の逼迫を引き起こし、記録的な企業間物価の上昇を招いた。一方、国内消費が中心の商品は需要回復遅れだぶつきが解消しない。
顔認識システム Facial Recognition System
カメラのデジタル画像から人を自動的に識別するためのコンピュータシステム。ライブ画像内の顔と思われる部分を抜き出し、顔面画像データベースと照合することで識別を行う。世界最高の顔認識システムでは1200万人分の静止画での「1:N認証」で、認証エラー率が0.22%に達する。 他の生体認証技術と比較すると、顔認識は最も信頼でき効率がよいとは言えないが、対象人物の協力を必要としないという重要な利点がある。空港などのシステムは群集の中から犯罪者を見分けることができるが、指紋、虹彩、音声などによる認証では、このような使い方はできない。しかし、セキュリティという観点での有効性には疑問の声もある。その他の利点としては、一般的に普及している安価なカメラを使用することができる点、顔画像が証拠として残るため不正利用者等が発覚した場合に記録された顔画像を人が見ることで個人を特定することが容易である点(顔以外の生体情報は、その画像を人が見て個人を特定することは困難)などが挙げられる。一部の顔認識アルゴリズムは、顔画像から目立つ特徴を抽出することで識別する。例えば、顔のパーツの相対位置や大きさ、目や鼻やほお骨やあごの形を特徴として利用する。そのような特徴を使い、一致する特徴のある画像を検索する。別のアルゴリズムでは多数の顔画像から標準化したデータを作り、個々の顔画像はその標準データとの差分だけに圧縮し、顔認識に必要なデータだけを残す。対象画像はそのような顔データと比較する。初期の成功した顔認識システムの一つは、一連の圧縮された顔データを使い、顕著な顔の特徴のセットを使ったテンプレートマッチング技法に基づくものだった。認識アルゴリズムは大まかに2種類に分類でき、見た目の特徴を直接幾何学的に比較する方法と、画像を統計的に数値化してその数値をテンプレートと比較する方法がある。主な顔認識アルゴリズムとしては、主成分分析を使った固有顔、線形判別分析、弾性バンチグラフマッチング、隠れマルコフモデル、ニューロン動機づけによるダイナミックリンク照合などがある。最近では皮膚の見た目の詳細を顔認識に応用するという傾向がある。画像からしわやしみを特定して数値化するものを Skin texture analysis と呼び、顔認識に利用した場合従来の20%から25%認識率が向上したという報告もある。
フライドポテト
日本マクドナルドは24日から30日まで、全国約2900店舗で販売するフライドポテト「マックフライポテト」のM・Lサイズの販売を休止し、最も小さいSサイズのみを販売した。マックフライポテトは米国とカナダで加工されたポテトを、冷凍された船便で輸入して使用している。今回の販売休止は、新型コロナウイルス禍を発端とする世界的なコンテナ不足が主因だ。さらに11月下旬にカナダ・バンクーバー港近郊で起きた水害の影響で大量のコンテナが滞留したことも響いた。 同社は12月に緊急措置として航空便で輸送しているが、年十数万トンの輸入量をまかないきれず、Sサイズ以外の一時販売休止を決めた。31日朝から販売を再開するが、在庫の逼迫は続いており、再び制限する可能性も拭いきれない。
エネルギー安全保障 energy security
市民生活、経済産業活動のために、環境への影響を考慮しつつ、必要十分なエネルギーを合理的な価格で継続的に確保すること。エネルギーの需要と供給は各国の最重要政策の一つであり、その安定的な確保のために資源獲得競争が行われている。短期的視点から見ればエネルギー安全保障とは突発的なエネルギー需給の変化に即時的に対応することのみを指すが、長期的視点から見るとエネルギー安全保障とは経済発展や環境保全を考慮に入れた上でエネルギー供給のために必要な投資を適宜行うことまでを目指すもの。日本は、世界第4位のエネルギー消費大国だが日本のエネルギー自給率は、わずか8%。エネルギーの80%以上を海外に依存し、その約半分をしめる石油は99%以上を輸入しているため、その安定供給の確保、つまりエネルギー安全保障は、日本の外交政策の重要な課題である。ウランは輸入に頼るがエネルギー密度が桁違いに高く、石油や石炭のような化石燃料よりも長期間にわたる備蓄が可能である。そのため、国産エネルギーとして計算が可能だとされている。原エネルギー自給率が石油危機以後から原子力発電によって2010年に20%まで上昇した。何台か原子力発電所を再稼働した後でも8%で注目されやすい食料自給率よりも低い。
ケミカルリサイクル
廃棄物を化学合成により他の物質に変え、その物質を原料にして新たな製品を作るリサイクル方法で、具体例として廃プラスチックを溶かして水素や二酸化炭素などの合成ガスを生み出し水素をアンモニアの製造に再利用したり、二酸化炭素から炭酸ガスやドライアイスを作り出したりすることが挙げられる。 使用済み資源を化学的に処理し、他の化学物質に転換して再利用するリサイクル手法で化学的再生法とも言われる。主な技術として、廃プラスチックを油に戻す「油化」やガスにして化学工業原料とする「ガス化」、製鉄所で還元剤として使用する「高炉原料化」、廃プラスチックからコークス・炭化水素油・コークス炉ガスを得る「コークス炉化学原料化」、廃プラスチック製品を化学的に分解して原料やモノマーに戻し、再度プラスチック製品に活用する「原料・モノマー化」がある。生ごみ・紙ごみ・畜産糞尿・草木類などの「バイオガス化」や廃食用油の「ディーゼル燃料化」、「石鹸化」、食品廃棄物や食品製造副産物などの「飼料化」といった技術も含まれる。 ペットの再資源化:キリンホールディングスと三菱ケミカルは、ケミカルリサイクルによるペットの再資源化に向けた共同プロジェクトを実施している。両社が技術検討するケミカルリサイクルは、廃ペットボトルを純度の高いペット原料に再生でき、これまで熱回収や廃棄されていたペットボトル以外のペット製品もペットボトルとして再生できるのが特徴だ。 ごみからプラスチックを製造:積水化学工業と住友化学は、ごみを原料とした樹脂材料「ポリオレフィン」の製造に取り組んでいる。ごみを分別なしでエタノールに変換する技術の開発に成功した積水化学工業と、ポレオレフィンの製造に関する技術・知見を有する住友化学の協力で循環型経済への移行を推進している。 ケミカルリサイクルの課題:ケミカルリサイクルの課題として、廃プラスチックの安定確保・プラスチック添加物の処理・輸送コストなどが挙げられる。回収される廃ペットボトルの一部にはごみなどが混在しており、良質な廃ペットボトルの安定的確保が困難であるため、効率的な回収・分別技術が必要となる。プラスチックには、適切に処理しなければダイオキシンを発生させる恐れのあるハロゲン化合物が含まれていることが多く、こうした添加物の処理技術の確立も課題だ。大型設備は石油コンビナートなどに隣接して建設されている場合が多く、局地的であるため、輸送コストが高くなる懸念もある。