景気動向指数 2020.12

3.おわりに

台湾で初となる潜水艦の自主建造が高雄市で本格的に始動したというニュースを見た。着工式では、蔡英文総統がボタンを押すと機械が作動し最初の鋼板が折り曲げられた。2025年に試作鑑が引き渡される見通しだ。この記事でふと思ったのが次に出て来る「ソールソースの購買戦術だ」つまり世界中で一社しか製造販売しない会社のサプライヤーから購買する場合の戦術であるが、平時でない時、つまり自然災害やウイルス蔓延で人の移動が制限される時に、どのようにして資機材を円滑に仕入れるか、買い求め取得するか。つまり買えなければ、また売ってくれなければ、自分で作るしかないわけだ。旧くから言われている内外策の検討である。欧米では昔からの購買戦術の一つであるが、日本では必ずしも全ての企業で積極的に使われている購買手法ではない。

記事では、台湾は、現役の潜水艦4隻が老朽化していると指摘されていたが、中華人民共和国の圧力で他の諸外国が台湾への売却に積極的になれなかった背景がある。従って当該台湾政府は国産計画を推進せざるを得なかったのだ。蔡総統は挨拶で、これまで潜水艦の建造が実現できるか懐疑的な人がいたとしつつ、着工することで実績ができたと喜んだ。また、潜水艦の自主建造が国防の強化につながるとの見方も示した。

これこそ究極の購買戦術、また戦略ではないか。つまり、どのサプライヤーも当社へ機器や資材を売ってくれない状況での話だ。これは、他山の石とみるべきで現実に近隣諸国で起こっている事実だ。勿論、民間企業でも通用する戦略だが、実現するには購買機能への全社的支援がないと達成できない。

思い起こせば我が日本も某国から経済報復を受けたことがあった。尖閣諸島の領有権をめぐり両国が対立した時だ。尖閣紛争をめぐり某国は2010年、日本に対するレアアース輸出を制限し、日本製品不買運動や日本観光禁止措置などの規制に入った。特にレアアースは電子製品の必須素材であり、当時の某国への輸入依存度は90%に達していた。正にソールソース(sole source)である。

日本を見ると、「某国の短期報復には耐え抜くべき」として毅然と対応した点が目を引く。まずレアアース輸出制限措置に対して輸出国の依存度を低め、他の国に輸入網を多角化し、オーストラリア、インド、カザフスタン、ベトナムなどでレアアース開発権を確保した。結果は日本の勝利だった。レアアース価格が暴落し、むしろ当該輸出国が打撃を受けた。

今更ながら長期戦に備えた段階別コンティンジェンシープラン(不測事態対応計画)を用意する必要がある。

月報編集室:主筆 上原 修 CPSM, C.P.M. JGA
特定非営利活動法人 日本サプライマネジメント協会