CPSM合格体験記11

私は2012年秋季セミナー(9月~11月)を受講し、2014年2月に最後のEXAM3に合格いたしました。2012年11月にEXAM2合格、2013年1月にEXAM1を合格しており、その後約1年の間をあけて、最後の合格という経過でした。
 それぞれのテストスコアは4年間有効であるため、当人としては(仕事が忙しかったこともあり)のんびりと構えていたのですが、結果として協会の先生方や会社の上司をはじめ、周囲の方々には色々とご心配をおかけしてしまいました。
 短期間のうちに3試験とも合格してしまうのが最良ですが、順調に進まなかった時の為のパターンとして、私の体験が役立つこともあるかと思いますので、紹介します。

1.CPSM資格取得の動機
 私は日本企業に20年近く勤務し、そのうちの10年間を米国系企業との合弁会社に在籍しておりました。そういった意味では、外資系企業の文化には慣れているつもりだったのですが、一担当者として外資系企業に所属しているのと、本社の管理部門で海外の子会社を統括する立場では役割が違い、苦労することとなりました。特に日本企業独特な指示体系と、欧米系子会社の理詰めの反論との調整に苦心していました。単純な語学力の問題ではないため、サプライチェーンについて、英語で、欧米的な理論を体系的に学べるツールがないかと探したところ、このCPSMを知りました。
 一方で上司も同じころに、同業他社の購買・物流部門が人材教育としてCPSM取得を活用していることを知り、また海外子会社の購買マネージャーがCPSMホルダーであることもあり、自社内でも資格取得者が出てくることを希望していました。
 そこで私も自己啓発の一環として、CPSM取得を目指すこととなりました。

2.セミナーについて
 セミナー体験者の方がほとんど推薦されているかと思いますが、私もセミナーの受講を強く薦めます。大手の資格対策講座のように安いセミナーではありませんが、このCPSM受験を検討されているような方にとっては、必ず役に立つ講座です。
 3か月間9回の講座で、多岐に渡るCPSMのぶ厚いテキスト3冊をポイントを押さえて説明してくれます。またテキスト以外の実践的知識の情報交換や議論もあり、有意義な時間でした。
 ともに受講した仲間は色々と話し合い、励ましあえる“同期”のような存在です。
 毎回、日本語、英語のテキストを100ページずつ進めるというのはかなり負荷のかかる作業です。(実際、持ち運ぶのもずっしりと重いです)しかし、受講を申し込んだ以上はきっちりと毎回出席し、各講義に集中して取り組むことが重要だと思います。

3.試験の対策とEXAM3の苦労
言語選択

 テストは英語か日本語を選択できます。ISMに1科目ずつ申し込む時点での選択となり、その後の変更はできません。1問1分で回答する必要があり、問題文によっては必要のない情報が長く書いてあるものもあり、早く読める言語を選択するのがいいでしょう。当初、日本語翻訳文がかなり難解なうえ、英語が中途半端に混じった分で意味を取りづらかったのですが、最近では日本語もかなり読みやすくなっています。

テストセンターについて
 テスト受験をISMに申し込んだ後、Pearsonテストセンターで場所と日時を予約となります。東京地区は帝国ホテルタワー18階にあるテストセンターでの受験です。休日は、予約が取り辛くなっています。かなり早めにセンターに予約をした方がいいでしょう。24時間前までは日程変更がききますので、見込みで予約をいれて都合が悪くなった場合に変更することもできます。逆に週末は直前に空きが出てくることがありますので、2,3日前から空きを探すという方法もあります。(注:皆さま、お忙しいのでついつい半休を使って受験したくなるのですが、あまりお勧めできません。午前中に仕事をしてから受験すると、予想外に仕事内容に脳が取られていて集中できないことに、テストが始まってから気がつきます。トラブルや重要案件を抱えているときほど、受験日を確保できずに半休を使いたくなりますが、特にやめた方がいいです。逆も、おそらく午後の仕事のことに、つい意識がいきがちで集中力を欠くでしょう)
 センター内に入ると、テキスト類を広げることはできません。私は早めにインペリアルビルへ行き、1階ロビーでテキストを復習してから時間ぎりぎりにセンターに入りました。
 手続きを終えた後、テストルームに入室となりますが、様々なテストを受けている人がいます。テストルームに入る前の筆記具などを渡される段階で、どの席かを聞き、席の交渉をした方が落ち着いて受験ができます。奥の個室が空いていれば、そこが最も集中できます。また椅子の高さがあっていないと、試験中にかなり疲労が溜まりますので、試験開始前に係員に言って、椅子の高さを合わせてもらってください。3時間の長丁場になりますので、雰囲気にのまれず、図々しく、集中しやすい環境となるよう自己主張をしてください。

時間管理とフラグ機能の活用
 165~180問を、約3時間かけて解くため、時間管理がキーとなります。PCモニターの端には残り時間が表示されていますので、定期的に見て、自分がどのくらいのペースで進んでいるか、常に気にかけてください。(とは言え、ななめ読みをすると、微妙な罠にひっかかります。じっくり問題文を読む時間はありませんが、それでもしっかり読み込んでください)
 またフラグ機能というものがあります。確信はないけれど、考え込んでいる時間もないような場合にはフラグをクリックしておくと、あとでフラグを立てた問題だけを一気に見直せます。また、最後までいくと「解答をしていない」問題を見直すこともできます。うっかりと解答せずに次の問題文に進んでいることもありますので、解答抜けがないかどうか、最後に必ず確認をしてください。

各テストの特徴と対策について
 テスト対策ですが、まずはセミナーでテキストを勉強した後、問題集を英語、日本語の両方で解いておくのは必須です。ですが、はじめて受験した時に、まったく予想外の問題に当たります。テキストや問題集が発行されているのが2009年ですが、テスト問題は今現在の時代に合わせた問題が多いです。テキストでも問題集でもまったく見たことのない問題が多数出てきます。非常に戸惑いますが、以下、対応策を述べていきます。
 問題の種類は大きく分けて、言葉の定義や法律のように、テキスト内に明確に答えがあるものと、「X社のY氏は……という事案に当たり~、この場合どうするべきでしょうか?」というように、解釈の仕方がいくらでもあるものがあります。
 まず、明確に回答が分かる種類の問題は、100%正解を目指してください。テストの中でも、EXAM2は、この種類の問題が多いので点数を取りやすくなっています。米国の法律ですので敬遠したがる人もいますが、ここは点取り問題と割り切り、単語帳などを作成して覚えてください。
 解釈系の問題は、それまでの実務経験がプラスに作用する人と、マイナスに作用する人がいます。回答を聞いても、なぜ正解なのかわからない、というケースもあります。セミナーで演習問題を解いていたとき、正解を聞いて、クラス内に不気味な沈黙が広がった時もありました。
 CPSM的な考えに基づき問題文の意図をくみ取る、のが正攻法ですが、実務の在り方がCPSM的でない会社に在籍している場合、その考え方を推測できるようになるまでは苦労するというのが実情です。
 ただし、問題はすべて4択での回答で、問題数165~180問のうち、ダミーが15問、合格ラインが77~88問ですので、上記で述べたように明確に回答があるものを確実に押さえておくと、実のところ、不正解が多くてもするりと抜けて合格することができます。
 1問1問に一喜一憂せずに、確実に点数をとれるところを抑えておくこと、問題文の意図を冷静にくみ取ること、がポイントです。
 日本語での受験の場合には、本文の英文を推測すると、意図が分かるときもあります。そのためにも、問題集は日本語と英語の両方で解いておく必要があります。

不合格(fail)→再受験へ
 テストの合否はテストが終わった瞬間に画面に表示されます。合格(pass)の場合は単にほっとしていればいいのですが、不合格(fail)と出た場合、がっくりと気落ちするよりもまず、再受験へと意識を向けてください。
 日本語のテストを再試験する場合、ほぼ同じ問題が出ますので、前回のテスト時の記憶/記録があればかなり有利に再受験に臨めます。
 私は受験時には、手元の筆記シートに試験中気になった事項をあらかじめメモしておき、failと出た瞬間に、係員が来て退出となるまでの間に記憶し、何食わぬ顔で受付でスコアレポートを受け取り退出した後、一気に覚えたことを紙に書きとめるという作業をしていました。あと1,2問で不合格となった場合は、この対応でほぼクリアできます。
 不合格後は1か月以降に受験をするという規定になっています。数日経てばISMへ再受験の申し込みができますので、1か月後の予約を早めにとり、再受験してください。

EXAM3への対応
 EXAM3はEXAM1や2に比べて、やや性質が変わっています。非常に苦労するタイプと、あまり気にならずに合格するタイプとに分かれます。私はEXAM3で非常に苦労をしていましたが、偶々まったく同じ状況の人と情報交換する機会を得、色々と問題点や対策を整理することで合格することができました。
 まず3-Bのリスクとコンプライアンスですが、ここはEXAM3の中では貴重な点取り問題です。米国の法律や規則が並びますが、ポイントを掴むと覚えることは多くはないので、確実に押さえてください。3-CのStrategic Sourcingは今一つ、具体的な対応策が立てられませんでした。テキストや問題集よりも、現在の一般的なStrategic Sourcingの方が、もしかしたら役立つかもしれません。
 3-Aのリーダーシップですが、問題量からしても、ここが全テストの中で山場となります。一見範囲が広く、対象も多いためテキストの読み込みも浅くなりがちですが、内容を理解している、程度の理解力だと苦戦をします。一方で、問題文はまったく関係ないことを書いているように見えながら、問題の趣旨そのものは、テキストに忠実に出題されているものが多かったです。今になって振り返ってみると、英文テキストの黒ポチ(もしくは黒ポチに相当するような箇所)をしっかり把握しておくのが、合否の境目でした。
 私はそれぞれの単元で、自分が問題を作成する立場になったらどうするだろう、と考えて、3-Aを英語テキストを中心に復習しました。例えば、3-A-1から6問作成しようと考えると、キーになりそうな箇所が想像できるため、そこを1語句にまでこだわって把握しました。EXAM1や2に比べて、勉強時間もかなり長くかかり苦労しましたが、最後は拍子抜けするほどあっさりと合格し、ほっと致しました。

4.どのようにしてモチベーションを維持したか
 CPSM受験に当たり、最大の難関はモチベーションの維持だと思います。セミナー後、残念ながらセミナー参加者全員が受験するわけでもなく、また不合格となった全員が再チャレンジしているわけでもありません。早めの受験(できればセミナー中)を推奨されているのも、セミナー終了後時間が経つと受験へのモチベーションが激減していくからだと思います。
 テスト毎に高額な費用がかかりますし、日常業務が忙しいと日程を確保するのも、勉強時間を割くのも面倒になってきます。
 私はセミナー終了後、月に1度開催される精読会や同窓会、各種セミナー類に積極的に参加していました。同期のセミナー受講者も参加率が良く、義務感ではなく楽しんで出席できる環境にあったことは、本当に恵まれていたと思います。その為、途中で間が空くことはありましたが、受験そのものをやめようとは思いませんでした。
 セミナー後、3科目合格までに間が空きそうな場合は、(つい合格してから、と敬遠したくなりますが)セミナーや同窓会に顔を出して、関係者とコンタクトをし続けた方がモチベーションを保ち続けられます。いちど始めた以上は強い意志を持って、合格まで目指してもらいたいと思います。

5.資格取得後について
 資格取得後ですが、CPSMは合格してそこで終了という資格ではありません。各種セミナーなどに出席して、CEHポイントを稼ぎ、3年ごとに更新する必要があります。
 私自身、もともと合格前から精読会などに顔を出していましたが、通常業務と違う話を聞いたり、異業種の方々と話をしたりするのは、常にいい刺激になっています。ポイントを得るための義務だと考えず、前向きに楽しんで参加し、資格取得後もキャリアアップに励んでいただきたいと思います。

6.まとめ
 先日、日本サプライマネジメント協会上原理事長の書かれたコラムに、「日本企業はまったくグローバル化していない」「グローバル経済社会をあまりにも甘く見ている」との記述があり、実態はまさにその通りだと痛感しております。製造コスト削減の為、製造拠点を海外に転出させ一見グローバル化しているようですが、実際には日本語のできる現地スタッフを育成し、日本式ビジネスを持ち込んだ「日本ムラ」を拡大させているのが実情です。テリトリーを拡大させたという意味では現時点までは成功しているのですが、ステージが変わり、「日本ではこれが当たり前だから」「これが日本の慣習だから」というセオリーが通らなくなるとすぐに立ち往生してしまいます。
 たとえば、会議ひとつをとっても、すべて根回しを済ませたうえで顔合わせをしたがる日本人と、会議の場で議論をしなければ開催する意味がないと考える欧米人との間では、会議前から軋轢があります。そのようなとき、CPSMで学んだことをベースにひとつひとつロジックを組み合わせて調整していくと、欧米人相手に非常に理解してもらいやすいという体験をしました。特に相手がCPSMホルダーの場合は同じような表現や概念を使用するため、仕事が進めやすかったです。単純に資格を取得したということ以上に、資格取得を通じて学んだことが業務上役立っているというのが実感です。
 CPSMの資格がキャリアとして認められ、直接的に役立つのは欧米系企業ですが、逆に日系企業では学ぶ内容そのものが業務に役立ちました。今後とも、精読会やセミナーなどを通じ学んでいきたいと考えています。

 最後になりましたが、セミナーにてご指導いただいた先生方、一緒に受講したメンバーの皆様には大変お世話になりました。この場を借りて厚く御礼申し上げます。

以上