6.編集後記
コーポレート・ガバナンスcorporate governanceとは、企業経営を管理監督する仕組みのことだが、横文字ゆえに企業内で完全に理解していない人が多いようだ。日本社会では、往々にして横文字を駆使して取り巻きや集団の目をくらませる傾向がある。本来の定義としては、企業経営を監視する仕組みであり、「企業統治」とも呼ばれる。株式会社は、資本を投下している株主のものであり、経営者のものではないという「所有と経営の分離」の考えに基づき、企業の不正や経営者による独善的な判断・運営を防止し、長期的な企業価値の増大を目指すためのものだ。
加えて、良く出てくる”Comply or Explain” とは、「遵守せよ、さもなくば、説明せよ」というもので、当事者に対し、コーポレートガバナンス・コードCorporate Governance Code(CGC) を遵守するか、遵守しないのであれば、その理由を説明することを求めている。
現下に騒がれている某テレビ局経営陣は、有名タレントとのトラブル(Troubleの日本語訳が欲しい)によって多額の損失が見込まれる事実を把握していた時期と、実際に公表した時期の間に大きな隔たりがあると指摘されている。会社法では、取締役には企業や株主の利益を守るために忠実に業務を行う義務があり、収益に深刻な影響を与える事象が発生した場合には迅速な開示が求められる。もし、このトラブル(○○被害)が一年以上前に発覚していたのに公表しなかったのであれば、取締役全員が株主代表訴訟のリスクを負うことになり、社外取締役や監査役がその段階で適切な監督を行わなかったとすれば、冒頭のガバナンス体制そのものが問われる事態になるだろう。取締役会構成員がどのように情報共有をしていたのか、また外部の監査機関がどの程度チェック機能を発揮していたのかが今後の焦点となる訳である。
このコーポレート・ガバナンスの目的として主に二つを挙げることができる:
- 経営の透明性確保 ②中長期的な企業価値の向上
因みに、よく聞かれる「統治権と統帥権の違い」であるが、統帥権とは、大日本帝国憲法下の日本における軍隊を指揮監督する最高の権限(最高指揮権)のことで軍令権を意味する。一方、統治権とは、国際法や国内法で有する国土や国民など国家を治める権利のことである。
- 統治権:国家を治める権利。国家の最高権力。
- 統帥権:軍隊を指揮する権利。軍の最高指揮権。
日本では、東証の企業統治指針Corporate Governance Code(CGC)が出来て、浸透したのは10年くらい前のため形式主義に陥っている会社が多い。特に社外取締役について「3分の1以上」とあるも、その基準を満たしていても形だけが多いと言われる。取締役でも社外と社内の関係性も希薄と言われている点が形式主義を物語っているようだ。
毎月ISMジャパンが配信している「海外向けニュースレター」の2月号では、前述した話題であるテレビ局の問題が取り挙げられた。ここに編集室が受信した欧州の購買専門家の反応・意見を参考までに示しておく:
【原文】Bonsoir, Bien reçu – merci. Cet effet de « gestion de village » est en effet majoritairement révolu dans nos contrées, sous l’effet de l’ouverture vis-à-vis des marchés internationaux. Il existe bien entendu toujours un effet « réseaux », permettant à des cercles de décideurs (par appartenance à des groupes sociaux et/ou élites, différents d’un pays à l’autre) d’exercer une réelle influence en dehors des mécanismes réguliers et réglementaires. Comment conserver une partie positive des « traditions et racines » tout en injectant des meilleures pratiques internationales et du sang neuf – voilà l’éternelle question …. Bien à vous
【英訳】Good evening, Well received – thank you. This “village management” effect is indeed mostly over in our countries, under the effect of the opening up to international markets. There is of course still a “network” effect, allowing circles of decision-makers (by belonging to social groups and/or elites, different from one country to another) to exercise a real influence outside of regular and regulatory mechanisms. How to preserve a positive part of “traditions and roots” while injecting international best practices and new blood – that is the eternal question…. Yours sincerely
【和訳】こんばんわ。受信しました、有難う。実際のところ、国際市場への開放により、この「村落経営」の影響は私達の地域ではほぼ過去のものとなっています。もちろん、常に「ネットワーク」効果があり、意思決定者のグループ(国ごとに異なる社会集団やエリート層に属する)が、通常のメカニズムや規制の外で実際の影響力を行使できるようになります。国際的なベストプラクティスと新しい血を注入しながら、「伝統とルーツ」の良い部分をどのように保存するか – それは永遠の課題です…敬具
以下余白
月報編集室:主筆 上原 修 CPSM, C.P.M. JGA
特定非営利活動法人 日本サプライマネジメント協会TM