1. 米製造業景況感指数:製造業回答者の声
Manufacturing PMI® at 50.9%
January 2025 Manufacturing ISM® Report On Business®
- New Orders Growing and Backlogs Contracting
新規注文増加と受注残減少
- Production and Employment Growing
生産と雇用増加
- Supplier Deliveries Slowing
サプライヤー出荷遅延
- Raw Materials Inventories Contracting; Customers’ Inventories Too Low 原材料在庫縮小;顧客在庫過少
- Prices Increasing; Exports and Imports Growing
価格上昇;輸出と輸入増加
【解説】
米サプライマネジメント協会(ISM)が3日発表した1月の米製造業景況感指数は50.9と前月から1.7ポイント上昇し、2022年9月以来、2年4カ月ぶりの高水準となった。雇用環境や生産活動、新規受注などで幅広い改善が見られた。同指数は好不況の分かれ目とされる50を上回った。ダウ・ジョーンズまとめの市場予想(50.0)も上回った。個別の項目では、新規受注を表す指数が55.1で前月比3.0ポイント上昇した。生産に関する指数も52.5と2.6ポイント上がった。雇用環境を表す指数は50.3と4.9ポイント上がった。回答者からは「需要は引き続き安定しており、再び追加の雇用を検討し始めた。価格も堅調に推移している」との声が聞かれた。ISMで調査を担ったティモシー・フィオレ委員長は「需要と生産、雇用が改善した。引き続き多くの企業で人員削減が行われているものの、そのペースは弱まっている」と指摘した。一方、調査はトランプ米政権が関税方針を打ち出す前の結果を反映したものであり、現在の水準が今後も続くかは不透明との見方が多い。トランプ大統領は1日、メキシコとカナダに25%の関税、中国に10%の追加関税を課す大統領令に署名した。英キャピタル・エコノミクスのアシスタント・エコノミストは「大陸全体で始まった貿易戦争により、製造業景況感の回復は短命に終わる可能性が高い」と解説する。
拡大・縮小の分岐点となる50を超えたのは22年10月以来初めて。米経済の10.3%を占める製造業の成長を示唆したが、トランプ米大統領によるカナダ、メキシコ、中国への関税措置により、原材料価格が一段と上昇し、サプライチェーン(供給網)の混乱を招く可能性があることから、回復は長続きしない公算が大きい。繊維、一次金属、機械を含む8業種が拡大した一方、木材、コンピュータ・電子製品などは縮小した。サブ指数を見ると、先行指標となる新規受注は55.1と前月の52.1から上昇したほか、生産も上向きとなった。支払い価格は54.9と、前月の52.5から大幅に上昇し、8カ月ぶりの高水準となった。エコノミスト予想は53.5だった。供給業者の納入を示す指数は50.9と、前月の50.1から上昇。50を超えると納入が遅くなっていることを示す。雇用は50.3と前月の45.4から回復し、5月以来初めて拡大した。ネイションワイドのチーフ・エコノミストは、関税は生産に打撃を与え価格を上昇させるマイナスの供給ショックを引き起こすと指摘し、米国が追加関税を実施すれば、インフレと国内総生産(GDP)成長への悪影響を増幅させることになると述べた。
米ISM製造業景況感指数 |
製造業約350社の購買担当者に対し受注や生産状況をアンケート調査により聞き取りし、月初めの第1営業日(その2日後に非製造業を公表)に公表している統計。日本の企業短期経済観測調査(日銀短観)に似た統計といえます。米主要統計の中でも最も早く月初めに発表されるため、市場関係者の注目度が高く、景気の先行指標とされています。一般に好不況の判断の境目とされる50%を割れると景気後退で、50%を超えると景気拡大と判断されます。GDPとの関連性を持たせるために2008年1月分の統計より算出方法が変更され、現在は「新規受注・生産・雇用・入荷遅延・在庫」の5項目(比率はそれぞれ20%)につき、「増加、同じ、減少」の回答結果をもとに算出する。民間調査機関13社の予測値(中心値)が前もって出回るので、リリース時にはそのギャップも重要になります。 |
製造業回答者の声WHAT RESPONDENTS ARE SAYING …
1 | Chemical Products 化学製品 | 顧客からの受注は予想よりやや好調。化学品/原材料の全般的な値上がりを見ている。国際港湾労組International Longshoremen’s Associationのストライキがないのは非常に助かる。 |
2 | Transportation Equipment 輸送機械 | サプライチェーンの状況が緩和されつつあるが、深刻な不足状況に逆戻りしており、逆風が続いている。航空宇宙・防衛企業にとって、重要鉱物のサプライチェーンは、中国の規制により劇的に逼迫している。サプライチェーンが一層不足する環境になる懸念が高まっている。 |
3 | Food, Beverage & Tobacco Prod 食品・飲料・煙草 | 2025年の数量は2%成長を目標としている。組織は、潜在的な関税、それに、その影響を受けるサプライチェーンにおける経路変更やコスト上昇への対応に留意している。 |
4 | Computer & Electronic Products コンピュータ・電子製品 | 米政権の移行に伴い、当社は、製造に使用される原材料への関税の衝撃を引き続き注視していく。中国の刺激策により、受注を獲得し、サービスや消耗品の利用が増えている。全ての素材と部品にコスト圧力が残っているが、安定し始めている。 |
5 | Machinery 一般機械 | 繁忙期ではあるが、2025 年最初の二週間の需要はこの時期の通常レベルを上回っている。 |
6 | Fabricated Metal Products 金属加工製品 | 2025年の設備機器販売状況は、好調に始まった。例年、年明けは軟調な開始となるため、この好調な始まりは異例である。 |
7 | Electrical Equipment, Appliances & Components 電気機器・家電・部品 | 景気は徐々に改善している。 |
8 | Miscellaneous Manufacturing その他の製造業 | 新規受注は依然好調だが、前四半期に比べ減少している。現在、受注残を消化中である。 |
9 | Primary Metals 一次金属 | 自動車関連の受注は引き続き安定している。社員の追加採用を再び検討し始めている。価格は安定している。これまでの工場の非効率を取り戻すため残業を余儀なくされている。 |
10 | Textile Mills 繊維工場 | 旺盛な顧客需要と2024年より高い売上を期待している。 |