2025年1月報告

4. 中国の製造業景況感

①財新/S&Pグローバルが2日発表した12月の中国製造業購買担当者景気指数(PMI)は、50.5と前月の51.5から低下し、市場予想の51.7も下回った。貿易見通しへの懸念から海外からの受注が減少し、全体の売り上げを押し下げた。新規受注の伸びが鈍化したため、生産を示す指数は3カ月ぶりの低水準となった。世界経済の低迷と米国の関税政策が中国経済に大きなリスク要因となっている。製造業者の2025年の生産に対する楽観的な見方は維持されたが、楽観度は9月以来の低水準となった。成長と貿易の見通しに対する懸念が新製品の投入と政策主導の売り上げ増加期待に重しとなっている。また12月は購買品在庫の伸びが鈍化し、完成品在庫が積み上がった。従業員数は4カ月連続で減少したが、減少幅は11月より小幅だった。購買価格が上昇する一方で、製品価格は9月以来の下落となった。調査対象企業はコスト上昇を吸収し、販売価格をさらに引き下げて売り上げを支えたと回答した。輸出費用も減少した。

財新智庫のエコノミストは、「今年は外部環境がより複雑になることが予想され、早期の政策準備と迅速な対応が求められる」と述べた。家計収入を増やし、人々の生活を改善するための政府の取り組みが必要と指摘した。

②財新/S&Pグローバルが6日発表した昨年12月の中国サービス部門購買担当者景気指数(PMI)は52.2と、前月の51.5から上昇し、7カ月ぶりの高水準となった。内需の伸びが寄与し、景況拡大・縮小の分かれ目となる50を上回った。一方、海外からの受注は減少し、貿易リスクの高まりを示した。国家統計局が先週発表した非製造業PMIも11月の50.0から52.2に上昇していた。中国経済は過去数年、消費・投資の低迷や深刻な不動産危機を受けて苦戦を強いられてきた。輸出は数少ない明るい話題の一つだったが、トランプ次期米政権による関税強化に直面する可能性がある。こうした中、当局は景気支援に向けた財政・金融政策をここ数カ月で相次いで打ち出した。

財新智庫のシニアエコノミストは「9月下旬以降、既存の政策と追加刺激策の相乗効果が市場に作用し、よりポジティブな要因を生み出している」と述べた。財新の12月PMIは新規事業指数が11月の51.8から52.7に上昇した。一方、海外からの新規事業は2023年8月以来初めて減少した。雇用も4カ月ぶりに減少し、一部企業は投入資材価格や賃金の上昇などコスト面の懸念を理由に挙げた。同エコノミストは、内需の低迷と外部環境の悪化を背景に、強い下押し圧力が続いていると指摘。「今年は外部環境がより複雑になることが予想され、早期の政策準備と時宜を得た対応が必要になる」と述べた。企業景況感は50を上回る水準を維持したものの、一部企業が競争激化や貿易混乱の可能性に懸念を示し、20年3月以降2番目に低い水準に低下した。

製造業とサービス部門を合わせた総合PMIは51.4と、11月の52.3から低下した。

中国国家統計局PMIは製造業3200社を対象に調べる。新規受注や生産、従業員数など項目ごとに調査する。50を上回れば前月より拡大、下回れば縮小を示す。
PMI(中国製造業購買担当者景気指数)
全国の製造業約820社の購買担当者を対象にしたアンケート調査。生産や受注について50を上回ると拡大,下回ると減少を示す。非製造業には建設,郵便,ソフトウェア,航空,鉄道,小売り,ケータリングが含まれる。
2009年設立の財新/S&Pグローバルの月例まとめ
中国の独立系経済メディアとして週刊誌やオンライン媒体を展開している。“独立、客観、公正”の原則を掲げた調査報道を行い、報道統制が厳しい中国で、世界を震撼させるスクープを連発。中国はインターネット上のメディアプラットフォームで記事の再配信が認められる報道機関の公式リストから財新伝媒を除外した。報道規制の強い中国で、リベラルな情報源として知られた財新の影響力を弱める動きだ。 金融ニュースを提供する財新は、汚職や公害、政府に対する国民の怒りなどを伝えてきた。リスト除外は微博を運営する新浪などのインターネットプラットフォームに財新の記事を掲載できなくなることを意味する。