2024年11月報告

6.編集後記

米国大統領選挙がトランプ氏圧勝で幕を閉じた。世界中の多くの人の予想、接戦になるかも知れないというマスコミ報道が完全に外れたという記事も見た。筆者なりの判断は漫画である。MAGA:Make America Great Again⇒MANGA: Make America Nippon Great Again

つまり日本国も世界で強くならないといけないと思うからだ。背景にはVUCAに象徴される世界情勢がある。今年の初めにVUCAからBANIになるという話をISMインド会長と電話会議で聞いたからだ。同会長曰く;

VUCAは元々、1990年代に米軍が戦略的な状況を説明するために初めて使用した軍事用語であり、冷戦の終結後、予測困難な変化や不確実性が増し、これまでの核兵器ありきの戦略では対処できない状況が生じた。そこで米軍はVUCAの概念を採用し、組織内での意思決定や戦略の立案に活用した。その後、2010年代頃から経営学やリーダーシップの分野で広く受け入れられ、組織の状況や環境を特徴づけるために使用されるようになった。

一方BANIは、VUCAに替わる概念として、カリフォルニア大学教授で未来研究所Jamais Caiscoにより提唱されたと言われている。冷戦時代にVUCAというキーワードが生まれてから、長い年月が経ったためBANIは、より現代に合う概念として、Caisco氏によって作られたのだそうだ。

BANIはVUCAと同様に、4つの言葉の頭文字で構成されている:

Brittle(脆弱性)度重なるシステムの障害や唐突な新型コロナ感染拡大など、様々な脆弱性によってビジネス環境は常に脅かされている。ウイルスはその後も別の形や新種が出てきており容赦なく世界中を襲ってくる。

Anxious(不安)脆弱性によるリスクが常に存在することの不安であるが、関東圏を中心に怒っている強盗殺人が挙げられよう。金に困った若年層が容易に手を出す闇バイトである。

Non-Linear(非線形性)非線形は、常識として抱かれる期待との一致しない変化を意味している。但し、ある国の常識が別の国では非常識と映ることは往々にしてある。これは直線的でない、つまり原因と結果が直接結びつかないことを意味している。

Incomprehensible(不可解さ)非線形性がみられる状況や結果は、既存の論理では理解できず、調査の意味もないと感じられてしまうことで、情報や出来事が複雑過ぎて理解し難いという意味だ。不可解さは、人工知能の特徴の一つと言え、AIが何らかの結果に至るまでの工程は、人にとって理解し難いものがある。こうした理解の困難さを上回る便利さが普及を後押ししているようだが、技術的な変化に心情的な理解が追いついていないこともまた、先の不安に繋がっている。このようにAIの拡大で、人がどのように感じているかを捉えようとする時、BANIの特徴が際立つのではないだろうか。

創出者Caiscoに依れば、VUCAは混沌とした現状を描写するのには適している一方でBANIという概念は混沌としているが受け入れなければならない未来を描写し、より身近に感じさせると語っているのが興味深い。

筆者は、別の機会でVUCAを因数分解を試みたのが下図である:

客観性を重視するVUCAに比べ、BANIの方は、主観的な心情に重きを置いている点に特徴があり、それが魅力となっていると言えよう。既にVUCAが世界的に定常的になっている現代社会も、実はBANIを通して見ることで、また違った様相に気付かされている筆者である。

以下余白

月報編集室:主筆 上原 修 CPSM, C.P.M. JGA

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