2024年11月報告

1. 米製造業景況感指数:製造業回答者の声

Manufacturing PMI® at 46.5%

October 2024 Manufacturing ISM® Report On Business®

  • New Orders and Backlogs Contracting

新規注文と受注残減少

  • Production and Employment Contracting

生産・雇用減少

  • Supplier Deliveries Slowing

サプライヤー出荷遅延

  • Raw Materials Inventories Contracting; Customers’ Inventories Too Low

原材料在庫縮小;顧客在庫過少

  • Prices Increasing; Exports and Imports Contracting

価格上昇;輸出・輸入縮小

【解説】

米サプライマネジメント協会(ISM)が5日発表した10月の米非製造業(サービス業)景況感指数は56と前月から1.1ポイント上昇し、2年3カ月ぶりの高水準となった。市場予想(53.8)も上回った。人手不足に伴う従業員の確保を急ぐ企業が増え、雇用に関する指数が改善した。好不況の分かれ目を示す50も4カ月連続で上回った。50割れが続く米製造業と比べ、米サービス業の底堅さを示す。指数全体を押し上げたのが雇用に関する項目だ。雇用環境の指数は4.9ポイント上がり、53だった。回答企業からは「休日のピーク時に短期労働者を雇っている」。「離職者のポジションの補充に苦労している」といった声が上がった。新規受注に関する指数は2ポイント低下し、57.4だった。企業活動を表す指数は2.7ポイント下がり57.2だった。材料などの仕入れ価格を示す指数は1.3ポイント下がり58.1となった。米国の会計年度末で企業活動が増えていた9月と比べ数値が下がったものの、いずれも節目の50を上回っている。納期を示すサプライヤー指数は56.4と4.3ポイント上がった。この指数は上昇するほど納期に遅れが生じていることを示す。9月から10月にかけて発生した大型ハリケーンや10月初旬の港湾労働者のストライキの影響を受けた。回答企業からは「ハリケーンの影響で点滴用品の不足が発生し始めている。港湾ストライキも医薬品材料の出荷に影響を及ぼした」(医療)。「港湾ストライキの影響で出荷先を変更せざるを得なかった」(宿泊・飲食)といった声が上がった。

それでも遅延は想定より軽微だったとの見方もある。調査を担ったISMのスティーブ・ミラー氏は「港湾労働者のストライキは期間が短かったため、懸念されていたほどの影響はなかった」と指摘した。5日に投票が始まった米大統領選の行方も企業の活動に影響する。ミラー氏は「政治的不確実性に対する企業の懸念は、前月よりも高まった」と付け加えた。企業からは「選挙の結果が出るまで新たな投資を止めている」との声も出ていた。

米ISM製造業景況感指数
製造業約350社の購買担当者に対し受注や生産状況をアンケート調査により聞き取りし、月初めの第1営業日(その2日後に非製造業を公表)に公表している統計。日本の企業短期経済観測調査(日銀短観)に似た統計といえます。米主要統計の中でも最も早く月初めに発表されるため、市場関係者の注目度が高く、景気の先行指標とされています。一般に好不況の判断の境目とされる50%を割れると景気後退で、50%を超えると景気拡大と判断されます。GDPとの関連性を持たせるために2008年1月分の統計より算出方法が変更され、現在は「新規受注・生産・雇用・入荷遅延・在庫」の5項目(比率はそれぞれ20%)につき、「増加、同じ、減少」の回答結果をもとに算出する。民間調査機関13社の予測値(中心値)が前もって出回るので、リリース時にはそのギャップも重要になります。

製造業回答者の声WHAT RESPONDENTS ARE SAYING …

1Chemical Products 化学製品適正化は続いている。主要原材料に関税を課す貿易政策を予測し、不測の事態に備えた計画を策定している。
2Transportation Equipment 輸送機械市場需要は2024年後半に大幅に減少し、2025年第1四半期までは軟調に推移すると予想される。インフレは安定し、過去の水準に戻りつつあり、金利も低下しているが、経済には全般的な悲観論があり、それが商用車への投資を含め、顧客の設備投資をより制限的にしているようだ。今度の大統領選挙の結果が不透明なため、特に電気自動車(EV)移行と貿易制限/ペナルティの将来に焦点を当てた、幾つかのリスク分析研究が準備されることになった。
3Food, Beverage & Tobacco Prod 食品・飲料・煙草今四半期の記録を越える販売量を守るため、10月の大口販売量を11月に延長した。
4Computer & Electronic Products         コンピュータ・電子製品景気は持ち直している。見通しは楽観的だが、良くはない。
5Machinery           一般機械ここ六カ月間、売上は非常に低迷している。しかし、興味深いことに、引き合いは1年前より30%以上増えている。これは、潜在的な需要があることを示しているが、顧客は国内や世界の経済状況に対して臆病になっている。当社は、顧客から直接、要件を満たすために設備を発注する必要があるが、引き金を引く前にプロジェクトをできるだけ長く維持しようとしているとの話を聞いている。
6Fabricated Metal Products        金属加工製品景気の水準は、依然低迷している。景気の先行きについては「様子見」のような環境であり、顧客は在庫を抱えたくないため、受注水準が低下している。
7Nonmetallic Mineral Products 非金属鉱物製品全体的な予測では、第4四半期まで景気は好調を維持するだろう。2025年第1四半期には、更に多くのプロジェクトが予定されている。それを支える需要はあるのか?
8Paper Products 紙製品既に興味深い第4四半期となっている。港湾ストライキ、台風ハリケーン、選挙は全て何らかの形で当社に影響を与えることだろう。当社の業界はエネルギー集約型なので、最大の懸念は電化に向けた連邦政府や州政府の信任だ。電気部品は既に供給不足に陥っており、変電所や送電線の被害により、電気サプライチェーンは一層悪化すると予想される。グリーン・エネルギー・プロジェクト用の部品は更に遅れるだろうが、環境保護義務付けが遅れることはないと見ている。
9Petroleum & Coal Products        石油・石炭製品港湾ストの可能性は、当社の業界に波及効果をもたらした。1月には大規模な輸入が数件あり、大規模で計画的な資本プロジェクトにとって重要な部品が予定通りに納品されるかどうかという不安が生じた。最近発生した三つの台風ハリケーンは、メキシコ湾岸の大規模な製造の中核拠点を外したが、それでも軽微な遅れは生じている。
10Wood Products    木材製品季節的な景気循環は計画通りである: 建築資材に対する消費者信頼感は比較的強いままであり、金利の引き下げと更なる小幅引き下げの潜在性により、2025年まで成長が続くと期待されている。