2024年3月報告

2.編集後記

日本経済新聞には「経済教室」という欄がある。元機械エンジニアの人が投稿していたので以下参考にしたい。

『ダイハツ工業の自動車で品質検査の不正が問題になっているが、ここ十年ほどの間に日本を代表する企業で検査の不正が相次いでいる。近年になって名門企業の検査不正が急増している原因は、ものづくりの海外流出が進み、ものづくりのプロ意識が日本全体で低下しているからではないだろうか。今、何が問題なのかを深く掘り下げて手を打たないと、「ニッポンブランド」の国際評価が地に落ちかねない。』

このエンジニア氏は長年に亘り、機械エンジニアとしてプラントメーカーと機械部品メーカーに勤務していたと言う。同氏曰く;営業・開発・設計・製造に比べて検査や品質管理は付加価値を産まないため、納期管理上も含めて軽視されやすい。検査部門や検査院の存在感や発言力は低く、昇進もしにくい。しかしながら、検査部門は会社の信用を守る最後の砦だ。検査のプロには高い見識と倫理感が求められ、こういう人材を得るには就職活動をする学生の憧れとなるような待遇も必要となる。検査部門の重視は国際競争力のある産業を再び国内に根付かせ、モノづくりの誇りと輝きを取り戻すことに繋がる。

ここまで読んで、筆者は、正に同じことが購買調達部門にも当て嵌まると感じた。欧米では学部の教育から「国際購買部:Gestion des achats internationaux: International purchasing management faculty」が存在し、学位を持つ卒業生がその道(購買調達)のプロとして企業で働いている。学部在籍中に数カ月から半年に亘ってインターンとして実務を経験しているから即戦力とまでいかなくても日本の新卒社員とは格段に違うのは、4年間の研究と学習が活かされているからだ。新型コロナウイルスによる長期休校の解決策として今春、浮上した「9月入学案」の話だ。都道府県知事から国会議員まで巻き込んだ論争に発展していたにも関わらず、政府は僅か40日足らずで「直ちに導入するのは困難」との結論に達し、結局纏まらなかったのは残念で仕方がない。この秋入学と言う課題は、決して新しいテーマではなく、明治時代の日本の大学はヨーロッパに倣い、秋入学だった。それが大正時代、4月に変わっていったのは、当時の徴兵検査対象者への通知が春だったからだという説もある。終戦後、1984年には「戦後政治の総決算」を掲げていた当時の中曽根首相が、教育改革を目指して作った臨時教育審議会に、その名も「入学時期委員会」が設置されて、9月入学実現に向けた本格的議論を始めた。この時、「教育も国際化を」と訴える財界側に立ちはだかったのが旧大蔵省と旧文部省であり、国や自治体の財政負担が増えると言う理由だった。その後も、数年に一度、浮かんでは消える失態を繰り返してきた。政治が国民の生活を捻じ曲げると言う従来の現象は続いている。

月報編集:主筆 上原 修 CPSM, C.P.M. JGA 特定非営利活動法人