2024年1月報告

2.編集後記

フェムテックFemtechという言葉を初めて聞いたのは、一昨年のダイバーシティサプライヤー会議においてである。調べてみると女性の健康の課題をテクノロジーで解決する製品やサービスのこととある。FemTechとは、Female(女性)とTechnology(テクノロジー)をかけあわせた造語であり、女性が抱える健康の課題をテクノロジーで解決できる商品(製品)やサービスのことを指す。

また、フェムテックは、比較的新しい概念として、その範囲は、妊娠、不妊、避妊、授乳、育児、生理用品、産後ケア、婦人科系疾患、セクシュアル・ウェルネスなど多岐に亘るそうだ。但し、起源は1960年代に遡るとも説明されている。当時、ピル黎明期であり、マーガレット・サンガーの活動の歴史を経て、米食品医薬品局(FDA)によって経口避妊薬が承認されて大きな反響を呼んでいた時代だ。しかし、女性の健康を改善するテクノロジーはなかなか発展しなかった。出産の可能性のある女性を臨床試験から除外する方針がとられたことも、研究が進まない要因となった。また、女性は医療に年間でおおよそ最大5000億ドル(約53兆円)を使っていると言われているが、投資家は女性の健康問題を解決する商品に関心がなかったようだ。男性向けの性に関する商品(バイアグラなど)は速やかに承認される一方で、女性の性はタブー視されていたと言える。

そういう時代にも、デンマーク出身の起業家を始めとする女性イノベーターがフェムテックを普及させた。生理トラッキングサービスを開発、従来の「女性らしさ」を強調するピンクのパッケージではなく、白と黒でデザインされているところも特徴のようだ。

その後は急成長分野として注目を集め、フェムテックのベンチャーキャピタル資金調達額がすさまじく増加し、2018年には6億2000万ドルを越え、2030年末までに少なくとも30億ドルに到達すると推測されている。米国リサーチファームFrost&Sullivanの2018年の調査に依ると、Femtechは2025年までに5兆円規模の市場になると予測されており、いま注目の分野であるが、この成長の背景には、女性起業家が増え、「女性による女性のためのビジネス」の隆興や、多くの女性が声をあげた#metoo運動も後押しとなっている。依然として経済・政治分野でのジェンダーの不平等はあるものの、より女性の意図や女性特有の悩みが汲み取られやすい社会へ変革しつつあるのは事実だろう。

2020年は日本でも「フェムテック元年」と言われ、フェムテック市場の企業数は、2020年11月には97社にまで増加したと報告されている。近年登場した日本の生理用品の多くは医薬品医療機器法の規定外の「雑品」として扱われ、品質基準がなく効能も示せない。こうした事態を打破しようと、2020年10月「フェムテック振興議員連盟」が発足し、商品・サービスの質や安全性の基準を示せるよう、厚生労働省や関連企業と協力して審査基準を設けることを目指している。近年、少しずつではあるが、仕事と育児が両立しやすいように求める女性の主張が大きくなりつつある。しかし、このFemTechが進むことは誰しも女性の願いであることには違いなく、テクノロジーの力で少しでも女性が生きやすい世の中になればと願うところである。

月報編集:主筆 上原 修 CPSM, C.P.M. JGA 特定非営利活動法人