2.編集後記
ウクライナ戦争が終わらない内に中東で新たな紛争が始まったと言うか、再発した。一般の日本人には少し遠い世界のようだが、地理的な距離よりも、心理的、また宗教的にかなり遠いと思う人も多い。中東は多くの国で構成されているが、イスラエルはユダヤ人のみで作られた、歴史的にまた宗教的にいわゆる逆側の国であり、あまり一般の日本人には知られていないが、帝国データバンクによると進出企業は実に92社と言う。現地の業務再開が見通せない拠点もあり、情勢の一段の悪化が懸念される。少し垣間見ると、某大手商社は駐在員や家族を国外に退避させた上、現地へ新たに出張しないよう全社員に注意喚起し「人命最優先で取り組む」と強調する。ソフト開発会社もデータセキュリティーや人工知能の研究拠点を中部テルアビブに置くが、数人の駐在員が日本に帰っていたタイミングで大規模戦闘が始まり、現在は再派遣を見合わせている。大手種苗会社は最先端の園芸技術の情報収集を目指し、今年6月に拠点を開設したばかりで2人が駐在していた。情勢の緊迫化を受け、民間機の席を確保して今月12日に日本への退避が完了した。化学品の輸出入を手がける会社も駐在員が既に帰国。担当者は「取引先への影響は大きく、現地では既に操業を停止した企業がある」と語っている。
後発医薬品世界最大手のテバファーマスーティカル・インダストリーズTeva Pharmaceutical Industries Ltd(イスラエル)社は、パレスチナのイスラム組織ハマスとイスラエルの軍事衝突は自社の業績に大きな影響を与えないとの見通しを示している。同社のイスラエルでの売上高は世界全体の2%にとどまり、同国での生産もドルベースで世界全体の8%未満に過ぎないと言う。興味深く、参考になることは、新型コロナウイルス疫病流行、また過去の安全保障上の不安の際と同様に、主要製品のバックアップ生産拠点を含む緊急対応計画を維持しているということだ。
これまでのニュースにならない数多くの襲撃や反撃があったが、実際の大規模なイスラエルへの攻撃は、50年前に遡り、エジプトとシリアから攻撃を受けた第4次中東戦争以来となっている。
テバ社曰く;当社は、イスラエルの企業として今回の恐ろしい攻撃を非難し、大きな損失と挑戦の時にイスラエルとともに立ち上がると強調し、現状を注意深く監視し、当社を頼りにしている世界中の何百万人もの患者に医薬品を届けるための事業継続を確保し、イスラエルの従業員の支援と介助に重点を置く。同社の日本でのグループ会社は武田テバファーマ、武田テバ薬品、テバエーピーアイの三社である。テバ製薬設立後は、本社を名古屋市に設置、新たに全国6支店、29営業所を展開し、2015年の売上高1000億円達成を目標とするなど、早期の規模拡大を掲げている国内トップのジェネリック医薬品企業となっている。
筆者の良く知るテバ社の元CPOリサ・マーチン女史も数年前に米サプライマネジメント協会で年間金賞を受賞した人だが、テバ・ファーマシューティカルズ社では、最高購買責任者として調達部門の変革に携わり、当初の戦略計画を2年前倒しで10億ドルのコスト削減を達成したことで有名だ。それ以前は、ファイザーで11年間、グローバル調達・オペレーション担当上級副社長などの要職を歴任している。いつ会っても気さくな姿勢を崩さないダイナミックな女性で、人間的にも非常に魅力的な人である。以下にラサ女史の経歴を挙げておく。
Lisa Martin, CPSM, C.P.M |
Senior Vice President, Global Procurement and Chief Procurement Officer for GSK, a science-led global healthcare company with sales of £30.2bn. GSK aims to bring differentiated, high-quality and needed healthcare products to as many people as possible with its three global businesses, scientific and technical know-how and talented people. In this role, Lisa is the first CPO to lead global procurement across all three businesses: Pharma, Vaccines and Consumer Healthcare. She leads the development and implementation of sourcing strategies and procurement activities on all externally purchased goods and services categories, including research and development, raw materials, packaging, manufacturing services, marketing and sales. This totals over £12 billion per year. Lisa is also responsible for designing and building the new integrated global procurement organization to support the delivery of GSK’s Innovation, Performance and Trust priorities and financial targets. Lisa also leads Worldwide Real Estate and Facilities for GSK, who drive informed decision making across all of GSK’s real estate, and manage facilities services for 486 properties, 92 countries and 56 million square feet. Prior to joining GSK, Lisa was CPO of Teva Pharmaceuticals where she was responsible for the transformation of the Procurement function, delivering $1bn in savings two years ahead of the original strategic plan. Previously, Lisa spent eleven years of her career at Pfizer in a number of senior roles including Senior Vice President, Global Procurement and Operations. Lisa has also held roles at Warner Lambert, Sony Pictures Entertainment, Columbia Pictures Entertainment and NBC. In 2013, Lisa was awarded the prestigious J. Shipman Gold Medal Award which is awarded annually to an individual who has performed distinguished service for the cause and advancement of the supply management profession. And in 2019 she was recognized in the CIPS and Supply Management Procurement PowerList as one of the 35 most influential procurement professionals of 2019. Lisa is Chairperson Emeritus of the Institute for Supply Management. She earned a Bachelor of Arts, magna cum laude, in communications and psychology from Long Island University C.W. Post College, New York. |
サイエンス主導のグローバルヘルスケア企業であるGSKのグローバル調達担当上級副社長兼最高調達責任者(売上高302億ポンド)。GSKは、三つのグローバル・ビジネス、科学的・技術的ノウハウ、優秀な人材を駆使して、差別化された高品質で必要とされるヘルスケア製品をできるだけ多くの人々に届けることを目指している。 今回の役職において、リサは三つの事業全てにおいてグローバル調達を指揮する初のCPOとなる: 製薬、ワクチン、コンシューマー・ヘルスケアの全ての三事業に跨るグローバル調達を指揮する初のCPOである。リサは、研究開発、原材料、包装、製造サービス、マーケティング、販売など、外部から購入する全商品とサービスのカテゴリーについて、調達戦略の策定と実施、調達活動を指揮している。その総額は年間120億ポンドを越える。リサはまた、GSKのイノベーション、パフォーマンス、信頼の優先事項および財務目標の達成をサポートする新しい統合グローバル調達組織の設計と構築の責任者でもある。リサはまた、GSKのワールドワイド・リアル・エステート・アンド・ファシリティーズのリーダーでもあり、GSKの全不動産において情報に基づいた意思決定を推進し、486の不動産、92カ国、5600万平方フィートの施設サービスを管理する。GSK入社前は、テバ・ファーマシューティカルズでCPOを務め、調達部門の変革に携わり、当初の戦略計画を2年前倒しで10億ドルのコスト削減を達成した。それ以前は、ファイザーで11年間、グローバル調達・オペレーション担当上級副社長などの要職を歴任。また、ワーナー・ランバート、ソニー・ピクチャーズエンタテインメント、コロンビア・ピクチャーズエンタテインメント、NBCでも要職を歴任。 2013年、リサは栄誉あるJ.シップマン・ゴールドメダル賞を受賞した。この賞は、サプライマネジメントの専門職の大義と進歩のために卓越した功績を残した個人に毎年授与されるもので、2019年には、CIPSとサプライマネジメントの調達パワーリストで、2019年の最も影響力のある調達専門家35人の一人として認められた。 リサはInstitute for Supply Managementの名誉会長である。同女史はニューヨークのロングアイランド大学C.W.ポストカレッジでコミュニケーションと心理学の学士号を優秀な成績で取得している。 |
以下余白
月報編集室:主筆 上原 修 CPSM, C.P.M. JGA 特定非営利活動法人