2023年10月報告

1. 米製造業景況感指数:製造業回答者の声

Manufacturing PMI® at 49%

September 2023 Manufacturing ISM® Report On Business®

  • New Orders and Backlogs Contracting

新規注文と受注残は縮小傾向

  • Employment and Production Expanding

雇用と生産は拡大傾向

  • Supplier Deliveries Faster

サプライヤー出荷は加速基調

  • Raw Materials Inventories Contracting; Customers’ Inventories Too Low

原材料在庫は縮小;顧客在庫過少

  • Prices Decreasing; Exports and Imports Contracting

価格は下落基調;輸出・輸入は縮小

【解説】 米サプライマネジメント協会(ISM)が2日発表した9月の米製造業景況感指数は前月から1.4ポイント上昇し、49.0となった。好不況の分かれ目となる50を11カ月連続で下回ったが、市場予想(48程度)は上回った。新規受注や生産といった主要指標が改善し、製造業の活動が上向く兆しも出ている。ファクトセットによると、同指数が節目の50を11カ月続けて下回るのはリーマン危機直後の2008年9月から09年7月以来となる。当時は落ち込み幅も大きかったが、現在はより小幅な「不況水準」に長くとどまっている状況だ。同指数は6月(46.0)を直近の底に回復方向にむかいつつある。9月分の主要項目をみると新規受注が49.2と前月から2.4ポイント上昇し、生産は52.5と2.5ポイント上向いた。雇用環境を映す指数も51.2と2.7ポイント上がり、受注や生産の持ち直しとともに人手を増やす動きがみられる。製造業が仕入れなどで負担する支払価格の指数は43.8と4.6ポイント低下した。調査対象の企業からは「全体が高騰するインフレではなくなり、価格は商品ごとに上下している」(食品・飲料・たばこ製品)との声があがった。市場では「原油価格の高止まりにもかかわらず物価の押し上げ圧力が弱まり、(米景気の)軟着陸の実現性が高まった」(オランダ金融大手ING)との見方もある。ただ、夏場の原油高の影響がこれから取引価格に波及する可能性もあり、物価高が一段と落ち着くかは不透明だ。9月以降は米自動車大手のストライキが拡大し、雇用や部品メーカーなど関連業界への余波の大きさが焦点になっている。「ストが長期化すれば生産活動の足かせになる」(調査会社オックスフォード・エコノミクス)との指摘も出ている。

米ISM製造業景況感指数
製造業約350社の購買担当者に対し受注や生産状況をアンケート調査により聞き取りし、月初めの第1営業日(その2日後に非製造業を公表)に公表している統計。日本の企業短期経済観測調査(日銀短観)に似た統計といえます。米主要統計の中でも最も早く月初めに発表されるため、市場関係者の注目度が高く、景気の先行指標とされています。一般に好不況の判断の境目とされる50%を割れると景気後退で、50%を超えると景気拡大と判断されます。GDPとの関連性を持たせるために2008年1月分の統計より算出方法が変更され、現在は「新規受注・生産・雇用・入荷遅延・在庫」の5項目(比率はそれぞれ20%)につき、「増加、同じ、減少」の回答結果をもとに算出する。民間調査機関13社の予測値(中心値)が前もって出回るので、リリース時にはそのギャップも重要になります。

製造業回答者の声WHAT RESPONDENTS ARE SAYING …

1Chemical Products 化学製品よりコスト競争力のある見積を提供するには、サプライヤーと緊密に調整する必要がある。 妥当な価格に到達するには、更にやり取りが求められる。
2Transportation Equipment 輸送機械注文と生産は引き続き安定しており、当社は、健全な受注残を維持している。 インフレの継続と賃金調整により物価は上昇し続けているが、当社は、市場が安定することで、ある程度の安心感は得られるはずである。
3Food, Beverage & Tobacco Prod 食品・飲料・煙草現在、コスト上昇は一般的に『インフレ』による全面的な上昇でなく、特定の商品に限定されている。
4Computer & Electronic Products         コンピューター・電子製品進化するサプライチェーン環境内で、顧客は協力関係を重視しながら、コスト削減の機会と納期短縮を求めて、新しいプロジェクトの開始に益々積極的な役割を果たしている。新型コロナウイルスパンデミック後、顧客は荒波を乗り切るため取引相手(パートナー)が必要であることを学んだ。
5Primary Metals   一次金属ビジネス状況と市場の需要は、引き続き好調だ。当社では、 今後12か月以内に生産能力に達する予想だ。
6Miscellaneous Manufacturing    その他製造業全体として、状況は非常に安定し続けてる:売上と収益は期待通りで、サプライ環境は 2021 ~ 22 年に比べ大幅に安定した。 注目すべき点は、パナマ運河(旱魃)、米中関係、UAW(全米自動車労働組合)のストライキが自動車生産を支える当社のサプライヤーに与える影響などが挙げられる。とは言うものの、全体的な情勢は安定していると感じる。
7Apparel, Leather & Allied Products   衣料・皮革・関連製品市場は依然、軟調だ。 当社の顧客は、ほぼ適切な在庫水準を保っているが、新型コロナウイルスパンデミックによるコスト増加で、より多くの費用を支払った。 誰もが低いコストで購入できることを期待し、在庫増を控えている。
8Nonmetallic Mineral Products 非金属鉱物製品セメント工場がもはや年間価格や保証価格を提示しなくなったのでセメント交渉は変化した。 当社は、現在、価格の変動こそ未だ決まってないものの、四半期ごとに傾向を強め、商品としての契約を一層拡大したいと考える。
9Petroleum & Coal Products 石油・石炭製品  景気後退が差し迫っているように感じる。 銀行市場に資金が流入し続け、インフレ率が現実に高くなっている。 多くの工場は、持続可能性の名目の下、原材料調達を減らしたり、消費量を削減したりしながら、生産能力の 80% で稼働させている。来たるべき冬の天候に合わせて、一部の製品の価格が上昇するかも知れない。
10Textile Mills 繊維工場新たなビジネス開発が本格化しているが、多くの予測は 2024 年の初めに設定されている。優秀な人材の採用と維持は、依然困難である。