2023年9月報告

1. 米製造業景況感指数:製造業回答者の声

Manufacturing PMI® at 47.6%

August 2023 Manufacturing ISM® Report On Business®

  • New Orders, Employment and Backlogs Contracting

新規注文、雇用と受注残は縮小傾向

  • Supplier Deliveries Faster

サプライヤー出荷は加速基調

  • Raw Materials Inventories Contracting; Customers’ Inventories Too Low

原材料在庫は縮小;顧客在庫過少

  • Prices Decreasing; Exports and Imports Contracting

価格は下落基調;輸出・輸入は縮小

【解説】 米サプライマネジメント協会(ISM)が1日発表した8月の米製造業景況感指数は、前月から1.2ポイント上昇し47.6となった。好不況の分かれ目となる50を10カ月連続で下回った。依然として低水準が続くものの、雇用や生産活動は前月より改善の兆しをみせる。指数は6月に2020年の新型コロナウイルス禍に入った時期を除き14年ぶりの低水準となったが、7月からは2カ月連続で改善している。ダウ・ジョーンズまとめの市場予想(46.9)も上回った。英調査会社キャピタル・エコノミクスのアンドリュー・ハンター氏は顧客向けメモで「雇用と生産の伸びが全体の上昇をけん引した」と解説した。

指数の内訳をみると、生産は前月から1.7ポイント上昇し50.0、雇用環境を映す指数も4.1ポイント改善し48.5となった。一方で、新規受注は46.8と0.5ポイント、在庫を示す指数は44.0と2.1ポイント、それぞれ前月から低下した。調査対象の企業からは「インフレによって消費者の購買意欲が低下している」(食品・飲料・タバコ製品)と需要低迷を指摘する声が聞かれた。「経済環境の不透明さから、顧客は長期的な見通しが立てづらくなっている」(電子機器・部品)と先行き不透明感を懸念する回答者も多かった。ハンター氏は、今後数カ月は指数の改善が続くとみる一方で「世界経済の減速や消費の鈍化を受けて長期的な製造業の回復の見通しをたてることは困難だ」との見方を示した。

米ISM製造業景況感指数
製造業約350社の購買担当者に対し受注や生産状況をアンケート調査により聞き取りし、月初めの第1営業日(その2日後に非製造業を公表)に公表している統計。日本の企業短期経済観測調査(日銀短観)に似た統計といえます。米主要統計の中でも最も早く月初めに発表されるため、市場関係者の注目度が高く、景気の先行指標とされています。一般に好不況の判断の境目とされる50%を割れると景気後退で、50%を超えると景気拡大と判断されます。GDPとの関連性を持たせるために2008年1月分の統計より算出方法が変更され、現在は「新規受注・生産・雇用・入荷遅延・在庫」の5項目(比率はそれぞれ20%)につき、「増加、同じ、減少」の回答結果をもとに算出する。民間調査機関13社の予測値(中心値)が前もって出回るので、リリース時にはそのギャップも重要になります。

製造業回答者の声WHAT RESPONDENTS ARE SAYING …

1Chemical Products 化学製品需要は依然、弱含み。顧客の在庫は枯渇しつつあるものの、実際の需要の増加は見られない。全体的な供給状況は軟化が続く。
2Transportation Equipment 輸送機械依然として注文の鈍化が見られる。供給制約は依然、当社の日常業務の現実的な部分を占めるも、最大限の生産能力に達するまで出荷を続けている。
3Food, Beverage & Tobacco Prod 食品・飲料・煙草顧客の注文が軟化しているは恐らく、サプライチェーンに対する顧客の信頼が高まり、在庫が削減されたためと考えられる。顧客も金利上昇で窮地に陥っており、加えて、消費者は高止まりするインフレにより購買力が侵食されていると感じ、購入を控えている。
4Machinery 一般機械第3四半期の終わりに景気が全般的に減速し、資本設備の追加について、当社の顧客は特定業務に必要なものだけを購入し、将来の事業に備えて資本機材を追加することはない。
5Computer & Electronic Products         コンピューター・電子製品経済状況と自社在庫の削減により、顧客からの注文がさらに減少している。受注残が減少するも、まだまだ堅調な収益を示している。
6Fabricated Metal Products 金属加工製品第1四半期の予測は引き続き堅調だが、第4四半期の受注は予測を下回り、顧客需要の鈍化を示している。これが在庫調整なのかどうかは不明。物流は安定しており、コストは2019年並みとなっている。不足品は現在少数品目に限定されているが、需要の鈍化を考慮しサプライヤーは必要な労働力の追加や補充に躊躇している。
7Primary Metals   一次金属全米自動車労組がフォード、ゼネラルモーターズ、英ステランティスで行う可能性のあるストライキに備えて、自動車の販売台数は依然、好調を維持している。下層サプライヤー向けに緊急時対応計画を策定するが、一般労働者の採用難が続いている。人材不足により業務効率が悪化している。注文状況は引き続き堅調で、2022 年に向けて進んでいる。
8Miscellaneous Manufacturing    その他製造業業績は、引き続き好調を維持し、売上高、利益ともに計画を上回っている。予約数は計画を下回ったが、これは、営業日が減り、夏休みがあったため想定内だった。
9Electrical Equipment, Appliances & Components     電気機器・器具・部品市場は、更に軟化している。今日の経済的不確実性により、顧客は長期的な予測を出すことを躊躇している。
10Paper Products 紙製品製造業は引き続き低迷しており、市場価格の低迷により利益を維持することが困難になっている。良い面としては、労働者が雇用に熱心な関心を示していることだ。エネルギーと燃料価格の上昇は当社にとって懸念事項だ。
11Plastics & Rubber Products プラスチック・ゴム製品景気は緩やかに改善し始めるも、まだ2022年の水準を大きく下回っている。『大規模な在庫リバランス』が漸く実を結びつつあるようだ。
12Wood Products 木製品借入コストを増加させるという(連邦準備制度の)措置により、住宅投資の需要が減退した。最近、この減速はやや頭打ちとなり、需要は安定してきた。 2024年の見通しは依然、不透明であり、当社は引き続き在庫の積み増しに慎重である。