1. 米製造業景況感指数:製造業回答者の声
Manufacturing PMI® at 46.9%
May 2023 Manufacturing ISM® Report On Business®
- New Orders and Backlogs Contracting
新規注文と受注残は縮小傾向
- Production and Employment Growing
生産と雇用は増加基調
- Supplier Deliveries Faster
サプライヤー出荷は加速基調
- Raw Materials Inventories Contracting; Customers’ Inventories Too High
原材料在庫は縮小;顧客在庫過剰
- Prices Decreasing; Exports Unchanged; Imports Contracting
価格は下落基調;輸出・輸入は縮小
【解説】 米サプライマネジメント協会(ISM)が1日発表した5月の製造業総合指数は46.9と、前月の47.1から悪化し、7カ月連続で拡大・縮小の分岐点となる50を下回った。金利上昇が重しとなり新規受注が急減した。一方、雇用は9カ月ぶりの水準に回復した。ロイターのまとめたエコノミスト予想は47.0だった。7カ月連続での50割れは2008年のグレートリ・セッション(大不況)以来最長で、米経済が年内に景気後退に陥るおそれがあるという一部の予想を支える格好となった。製造業は米経済の11.3%を占める。構成指数では、先行指標となる新規受注指数が42.6と、前月の45.7から悪化。価格指数も前月の53.2から44.2に低下した。一方、雇用は51.4と、50.2から上昇した。
今回の統計は製造業セクターの低調と合致する。消費者の支出はサービスに集中し、企業は売り上げに沿った在庫調整に注力。設備投資は限定的になっている。仕入れ価格指数は前月から9ポイント下げて44.2。7月以来の大幅な低下となった。受注の指数は3ポイント超下げて42.6。過去3年で2番目に低い数字となった。米サプライマネジメント協会製造業調査委員会会長は「新規受注は一段と縮小した。回答者らは依然、製造業がいつ成長を再開するのか不安に思っている」と発表文で指摘。「将来の成長を楽観する回答と、目先の需要低下が継続するとの回答はほぼ1対1だった」と続けた。受注残は前月に続いて低下し、2009年以来の低水準となった。入荷遅延は43.5と、14年ぶりの低さだった。生産の指数は51.1に回復し、昨年10月以来の高さ。雇用の指数も上昇し、昨年8月以来のレベル。2日には5月の米雇用統計が発表される。在庫に関する指数はまちまち。在庫指数は2020年8月以来の低水準だった一方、顧客在庫の指数は小幅に上昇し、2016年以来の高水準。受注の伸びが抑制された状況が、この先数カ月も続くことを示唆している。
米ISM製造業景況感指数 |
製造業約350社の購買担当者に対し受注や生産状況をアンケート調査により聞き取りし、月初めの第1営業日(その2日後に非製造業を公表)に公表している統計。日本の企業短期経済観測調査(日銀短観)に似た統計といえます。米主要統計の中でも最も早く月初めに発表されるため、市場関係者の注目度が高く、景気の先行指標とされています。一般に好不況の判断の境目とされる50%を割れると景気後退で、50%を超えると景気拡大と判断されます。GDPとの関連性を持たせるために2008年1月分の統計より算出方法が変更され、現在は「新規受注・生産・雇用・入荷遅延・在庫」の5項目(比率はそれぞれ20%)につき、「増加、同じ、減少」の回答結果をもとに算出する。民間調査機関13社の予測値(中心値)が前もって出回るので、リリース時にはそのギャップも重要になります。 |
製造業回答者の声WHAT RESPONDENTS ARE SAYING …
1 | Chemical Products 化学製品 | 新たなビジネスパイプラインが最終的に請求可能な生産をもたらしていることにより、需要は勢いを増し続けている。個人看護と在宅看護が推進力である。 |
2 | Transportation Equipment 輸送機械 | 当社は、顧客注文に対し引き続き大量の受注残を持つ。しかしながら、新規受注は鈍化し、当社サプライヤーの納期厳守は引き続き当社にとって課題であり、依然として毎週価格の値上げに直面している。労働力不足は企業内とサプライチェーン全体で改善されつつある。 |
3 | Food, Beverage & Tobacco Prod 食品・飲料・煙草 | 顧客と消費者が値上げに反発し始めているので、購買調達チームは価格設定が主な焦点になってきている。一部の裁量財(必需品でないもの)ではインフレが緩和している一方で、殆どの品目で食料価格の高止まりが続いている。 |
4 | Machinery 一般機械 | 景気は新型コロナウイルスパンデミック前のレベルに戻りつつある。商業/政府市場では需要が増加しているが、住宅/消費者市場では需要が減少している。 |
5 | Computer & Electronic Products コンピューター・電子製品 | 当社の事業に対する全体的な影響はまちまちだ。当社の科学機器事業は、資本財の購買を支援するための融資により弱体化が続いている一方、サービスと消耗品は軌道に乗り、一部の市場では増加が続いている。インフレに関する世界的な不確実性とヨーロッパの不安が続いていることを受けて、採用活動が鈍化している。 |
6 | Miscellaneous Manufacturing その他の製造 | 景気は良好で、需要は依然として旺盛であり、当社はそれに追いつくため生産を増やし続けている。 |
7 | Fabricated Metal Products 金属加工製品 | 1 か月から 6 か月後の顧客需要の変動が少ない。2023 年後半と2024 年初頭にかけて減速の兆しが見られる。特に東アジアからの物流が引き続き歴史的水準の輸送時間に戻りつつある。欧州とインドは上昇している。供給不足は一部の品目のみに限られ、サプライヤーは依然値上げを求めているが、今それを求めるには遅過ぎる。 |
8 | Electrical Equipment, Appliances & Components 電気機器・器具・部品 | 景気減速が明らかなため、産業とハイテク需要が押し上げられている。これが成長を阻害し、当初予測の10%成長と比較すると、現時点では2023年の需要は、横這いから僅かに増加する程度に見える。 |
9 | Plastics & Rubber Products プラスチック・ゴム製品 | 顧客の注文/需要は緩やかに増加し、サプライヤーの納期は改善し、原材料価格は安定から軟化に移っている。 |
10 | Furniture & Related Products 家具・関連商品 | 売上は僅かに減少するも、現在の歩調を維持している。壊滅的でなく、緩やかに推移している。 |