2023年5月報告

1. 米製造業景況感指数:製造業回答者の声

Manufacturing PMI® at 47.1%

April 2023 Manufacturing ISM® Report On Business®

  • New Orders and Production Contracting

新規注文と生産は縮小傾向

  • Backlogs Contracting

受注残は縮小基調

  • Supplier Deliveries Faster

サプライヤー出荷は加速基調

  • Raw Materials Inventories Contracting; Customers’ Inventories Too High

原材料在庫は縮小;顧客在庫過剰

  • Prices Increasing; Exports and Imports Contracting

価格は上昇基調;輸出・輸入は縮小

【解説】 米サプライマネジメント協会(ISM)が1日発表した4月の米製造業景況感指数は前月から0.8ポイント高い47.1となった。指数は2カ月ぶりに改善したものの、好不況の節目である50を6カ月連続で下回り、リーマン・ショックで金融危機が広がった2008〜09年以来、最長の「不況」を記録した。指数の50割れは、米製造業が足元の経営環境に懸念を強めていることを映す。6カ月連続で50に達しなかったのは、08年9月から09年7月以来、14年ぶりだ。新型コロナウイルス禍直後の20年3月〜同年5月の連続記録よりも長く、中堅銀行の相次ぐ破綻などを受けて企業の間でも景況感の悪化が続いているもようだ。米銀ウェルズ・ファーゴの調査グループは「景気後退期を除けば、このような負の連鎖はめったに起こらない」と指摘する。長引くインフレが尾を引いている。仕入れ価格の水準を示す指数は53.2と前月から4.0ポイント上昇し、22年7月以来の高水準となった。石油・石炭製品、衣料・革製品、コンピューター・電子機器などを含む9業種が同価格の上昇を報告した。価格が下がったと回答した業種の数を上回り、多くの企業がなおコスト高に直面している様子が浮き彫りになった。調査対象の企業からは「物価高の圧力に日々悩まされている」(食品・飲料・たばこ関連)との声があがった。企業活動は全般に停滞気味で、新規受注の指数は前月から1.4ポイント改善したが、45.7と依然低水準にとどまった。在庫を示す指数は46.3と前月から1.2ポイント低下し、20年8月以来の低水準となった。調査対象の企業は「新型コロナ禍に伴う需要拡大を見込んだ設備投資が一巡し、顧客企業が増えた在庫を減らそうとしている」(コンピューター・電子機器)と答えた。雇用環境を映す指数は前月から3.3ポイント上昇して50.2となり、3カ月ぶりに50を上回った。輸送機器、機械、化学製品などで採用活動が活発となった。米PNCフィナンシャル・サービシズのエコノミストは「23年後半には消費者の需要鈍化を背景に景気後退に陥り、新規受注も今後数カ月の間に減少するだろう」と指摘した。相次ぐ米銀破綻が企業活動におよぼす悪影響への懸念も増す。米連邦準備理事会(FRB)は2〜3日の米連邦公開市場委員会(FOMC)で、インフレ抑制を重視して0.25%の追加利上げに動くと市場は見込む。6月以降も更に利上げに踏み切るか議論するが「引き締め過ぎ」となるリスクも高まっている。物価と金融の安定をどう両立するかが焦点となる。

米ISM製造業景況感指数
製造業約350社の購買担当者に対し受注や生産状況をアンケート調査により聞き取りし、月初めの第1営業日(その2日後に非製造業を公表)に公表している統計。日本の企業短期経済観測調査(日銀短観)に似た統計といえます。米主要統計の中でも最も早く月初めに発表されるため、市場関係者の注目度が高く、景気の先行指標とされています。一般に好不況の判断の境目とされる50%を割れると景気後退で、50%を超えると景気拡大と判断されます。GDPとの関連性を持たせるために2008年1月分の統計より算出方法が変更され、現在は「新規受注・生産・雇用・入荷遅延・在庫」の5項目(比率はそれぞれ20%)につき、「増加、同じ、減少」の回答結果をもとに算出する。民間調査機関13社の予測値(中心値)が前もって出回るので、リリース時にはそのギャップも重要になります。

製造業回答者の声WHAT RESPONDENTS ARE SAYING …

1Chemical Products 化学製品たとえ年々ゆっくりであっても景気の縮小が続いている。可能な限り既存在庫を燃やし、注文に追いついている。サプライヤーは、特に支払い手続きを第 1 四半期の終わりに始めるため、より速い歩調で材料を出荷している。雇用は安定しており、第 2 四半期に予想される注文フローに基づいて人員を決定するが、これは変更される可能性がある。当社の分野の人材配置水準は減少していないが、雇用機会は経済全体で減速し、代替候補者の絶対量が減少している。現在、第 3 四半期には、特に航空宇宙産業向けの金属被膜加工において、ある程度の改善が見られると当社は予測する。しかし、国際や国内の予測不可の状況では事態が急変することもある。
2Transportation Equipment 輸送機械景気は順調で、今後の需要を注意深く監視し、不景気の傾向を検出する。
3Food, Beverage & Tobacco Prod 食品・飲料・煙草価格上昇の圧力が日々の業務を悩ませ続けている。インフレと小売業者への攻撃的な価格設定が何年も続いた後、価格を最終消費者に転嫁しようとする意欲に抵抗が見られ始めた。値引き交渉が話題になってきた。
4Machinery 一般機械顧客は在庫を非常に重視しているようだ (私の雇用主もそうだ)。これにより、過去数か月間、販売注文が大幅に減少した。
5Computer & Electronic Products         コンピューター・電子製品新型コロナウイルスによる過去三年間、サプライ チェーンのリスクを軽減する多額の投資を行ってきたが、当社は、その間に着実に増えてきた在庫を削減するため多くのサプライヤーと見直しを検討している。電子部品は依然懸念事項だが、納期は全体的に短縮されている。
6Miscellaneous Manufacturing その他の製造景気は引き続き堅調で、売上高と注文予約は計画を上回っている。予約増と電子部品のサプライ チェーンの制約により、受注残は増え続けている。
7Fabricated Metal Products 金属加工製品サプライヤーからのより速い出荷とより短いリードタイム。 …顧客は 2023 年下期の造形速度の削減について話し始めている。
8Primary Metals   一次金属当社は、矛盾の季節にいるように見える。景気は減速しているが、ある意味ではそうでもない。一部の相場商品価格は安定しているが、他はそうでない。幾つかの製品不足は終わったが、他のものは終わっていない。そうでない場合を除いて、トラック輸送は一層豊富だ。ある日は不確実性があるが、次の日はそうではない。次の数か月で答えが得られるかどうか。現時点で予測を立てるのは難しい。
9Electrical Equipment, Appliances & Components     電気機器・器具・部品販売は、2019 年の新型コロナウイルス疫病流行前と同様に引き続き低調だ。この低調は、あと2年は続くと予期される。
10Plastics & Rubber Products       プラスチック・ゴム製品自動車業界と建設業界の景気は少し持ち直している。2022 年と同程度ではないものの、良くなり始めたようだ。