2023年3月報告

4. 中国の製造業景況感

財新/S&Pグローバルが3日発表した2月の中国サービス部門購買担当者景気指数(PMI)は55.0と、前月の52.9から上昇し、6カ月ぶりの高水準を付けた。新型コロナウイルスを抑え込むゼロコロナ政策の解除で需要が回復し、雇用も堅調な伸びを記録した。景況改善・悪化の分かれ目となる50を2カ月連続で上回った。内訳では、新規事業が2021年4月以来の大幅増となり、新規輸出受注も約4年ぶりの高い伸びを記録した。市場の状況改善を受けて雇用は4カ月ぶりに拡大に転じ、20年11月以来の拡大ペースとなった。王文濤商務相は2日、今年に入って国内消費が大幅に回復し、主要なショッピングエリアと料理宅配部門がとりわけ活況だと指摘した。財新智庫のエコノミストは「経済はコロナ後の回復期に入った。サービス部門の活動は製造業よりも強く回復する兆しを見せている」と分析した。製造業とサービス業を合わせた2月の財新/S&P総合PMIは54.2と、前月の51.1から上昇し昨年6月以来の高水準を付けた。

【別報告】

中国国家統計局が1日発表した2023年2月の製造業購買担当者景気指数(PMI)は前月より2.5ポイント高い52.6だった。2カ月連続で改善し、1月に続いて2月も好調・不調の境目である50を上回った。春節(旧正月)休暇で帰省していた労働者が工場に戻り、生産活動が正常化した。

PMIは製造業3200社を対象に調べる。新規受注や生産、従業員数など項目ごとに調査する。50を上回れば前月より拡大、下回れば縮小を示す。2月の水準は、12年4月以来10年10カ月ぶりの高水準となった。内訳をみると、生産が56.7だった。6.9ポイント上昇し、22年9月以来の50超えとなった。新規受注は前月より3.2ポイント改善し54.1だった。雇用を示す指数も21年3月以来の50超えとなった。春節休暇が終わり、労働者が職場に戻ってきた影響が出たとみられる。PMIの構成要素ではないが、海外からの新規受注は6.3ポイントの大幅改善で、水準も52.4と21年4月以来の50超えとなった。

企業の規模別では大企業、中堅企業、中小零細企業のいずれも前月から改善し、節目の50を上回った。中小零細企業が50を上回るのは、21年4月以来だ。同時に発表した2月の非製造業のビジネス活動指数は56.3だった。1月から1.9ポイント上昇し2カ月連続で節目の50を上回った。建設業が昨年9月以来の高水準となる60.2を記録したほか、サービス業も55.6と、20年11月以来の高さとなった。運輸や宿泊などの景況感が大きく改善した。中国政府は1月初めに新型コロナウイルスの封じ込めを狙った「ゼロコロナ」政策を撤廃した。大都市での感染拡大も落ち着いたうえ、春節休暇も終わり2月は経済活動が正常化に向かい、前月と比べた景況感が大幅に改善したとみられる。ただ景気が持続的に持ち直していくには、安定した雇用回復などが不可欠だ。サービスの回復は比較的堅調だが、耐久消費財などには弱さも残る。春節に合わせて鉄道などが40日間の特別対応を取る「春運」(1月7日〜2月15日)の合計旅客数は延べ約16億人だった。1月6日時点の予測より5億人少なかった。

※PMI(中国製造業購買担当者景気指数)は全国の製造業約820社の購買担当者を対象にしたアンケート調査。生産や受注について50を上回ると拡大,下回ると減少を示す。非製造業には建設,郵便,ソフトウェア,航空,鉄道,小売り,ケータリングが含まれる。

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