3.おわりに:
先日、都内の企業で講演する機会があった。そこで現在問題となっているテーマを取り挙げた:ESG経営と企業統治である。昨今の企業不祥事を見ていると結局は、社内の独裁政権に辿り着くのは、実に残念なことである。講演では、「コーポレート・ガバナンスは企業不祥事の一因」として数々の例を挙げた。Comply or Explain → 自社に合った方法を!(自律的に考えることが大事)
企業不祥事の代償が大きいこととは皆が知っていることだが、トップの意識こそが企業全体の取り組みに影響を与えるのである。日本企業や政府自治体でも問題が起こるとすぐに「〇〇委員会」を立ち上げる。これだけは実に速い意思決定だが、形式から中身つまり実効性の議論が進まない。以下に掲げる図からも分かるように独裁者に対し、自由にモノが言えない体制こそが諸悪の根源である、と言うことも誰もがわかっている。民間企業では、経営の反対の事を言うと殺されはしまいが、同じくらいの制裁を受けると一般人は誰でもおののく。答えは人事権である。普通のサラリーマンにとって、転居を伴う転勤や出向命令は、個人の人生の一大事である。ウクライナ戦争ではロシアに捉えられた捕虜は、シベリアなど酷寒地へ追い出され過酷な労働を強いられていると聞く。

企業でも国家でも不祥事の原因となるのは、独裁政治であることが多い、これは、一個人や一党派が権力を独占して統治を行う政治体制のことで独裁制とも呼ばれる。近代以降においては社会主義国・共産主義国・全体主義国・国家主義国の中に多発しているということだ。そして独裁政治や独裁制を国の基本的な原則として重視する国家のことを独裁国家と言う。もともと「独裁政治」という単語は、戦争や内乱などの非常事態において法的委任の手続きに基づき、独裁官に支配権を与える古代ローマの統治方法に由来する。個人の自由を広く認めることは、統治体制崩壊への恐れがあるとし、一般に戦時や社会の混乱などの抑圧を行う際に多く出現する。
一般には、軍事的な手続きであるクーデターや内戦によってそのリーダーが独裁者となる場合が多いが、民主主義的な手続きの結果として独裁者が生まれることもある。ナチス・ドイツのアドルフ・ヒトラーは、民主主義、民主憲法であるヴァイマール憲法のもとで独裁化を果たした例である。独裁政治をとる場合において政党は必ずしも不要なものではなく、統治の補助・翼賛機構として支配政党を一つ作り、それ以外の政党を認めない一党制が敷かれることも多い。このような場合、対立党・候補の存在しない形式的な選挙を行い、この選挙結果をもって人民の支持を得たという外見がとられるため、独裁者や独裁国家が民主主義を称することも珍しくない。世界の殆どの独裁国は同時に資本主義であることにも見られるように、独裁体制は資本主義体制であってもあり得る。結果として、信条などの自由を求める民衆層による反抗・反乱の結果、悲惨な末路を辿ることが歴史上少なくなかった。一方で民間企業に勤める多くの一般庶民は公正な選挙によってしか民意を反映できない現実に向き合っているが、マスコミとSNSなど別の形で徐々に声を上げ出してきたことは、それができない市民に比べれば少しは自由なのではないだろうか。
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月報編集室:主筆 上原 修 CPSM, C.P.M. JGA 特定非営利活動法人 日本サプライマネジメント協会