2022年9月報告

1. 米製造業景況感指数:製造業回答者の声

Manufacturing PMI® at 52.8%

August 2022 Manufacturing ISM® Report On Business®

  • New Orders and Employment Expanding

新規注文と雇用は拡大傾向

  • Production and Backlogs Growing

生産と受注残は増加基調

  • Supplier Deliveries Slowing at a Slower Rate

サプライヤー出荷は緩慢な遅れ

  • Raw Materials Inventories Growing; Customers’ Inventories Too Low

原材料在庫は増加;顧客在庫過少

  • Prices Increasing at a Slower Rate; Exports and Imports Growing

価格は緩慢な上昇基調;輸出と輸入は増加

  • Prices Increasing at a Slower Rate; Exports Contracting; Imports Growing

価格は緩慢に上昇;輸出縮小;輸入増加

【解説】米サプライマネジメント協会(ISM)が1日発表した8月の米製造業景況感指数は52.8と前月比で横ばいだった。3カ月ぶりに下げ止まり、低下を見込んでいた市場予想を上回った。新規受注や雇用環境が改善した。供給面の制約も緩和の兆しが出始め、企業心理の悪化に一服感が出ている。同指数は速報性が高く、市場関係者も関心を寄せる。米景気の底堅さを示す結果になったことで、1日の米市場では米連邦準備理事会(FRB)による金融引き締めの長期化懸念が一段と高まった。

米長期金利の指標になる10年物国債利回りは一時、約2カ月ぶり高水準となる3.3%まで上昇(価格は下落)。米金利上昇でドル買いが進み、対ドルの円相場は一時1ドル=140円台と24年ぶりの円安・ドル高水準をつけた。ISMの製造業指数はインフレ加速とFRBの金融緩和の撤回で2021年末から低下傾向を辿ってきたが、22年7月の小幅な低下に続いて8月は横ばいになった。米証券専門家は「製造業(の事業環境)が安定しつつあることを示唆した」と指摘する。経済活動の拡大と縮小の境目となる50を上回る状態も維持している。項目別では、新規受注の指数が51.3と前月から3.3ポイント上昇した。雇用指数も54.2と4.3ポイント上向いた。採用が難しいとの回答割合が前月より下がり、労働需給の緩和を示唆する一方、採用凍結や人員削減の動きはあまりみられないという。回答企業からは「半導体不足の影響は小さくなりつつある」(輸送用機器)といった声が上がった。米調査会社は「サプライヤーの納期や受注残の動きからサプライチェーン(供給網)の混乱も和らいでいることが確認できる」と指摘した。

米ISM製造業景況感指数
製造業約350社の購買担当者に対し受注や生産状況をアンケート調査により聞き取りし、月初めの第1営業日(その2日後に非製造業を公表)に公表している統計。日本の企業短期経済観測調査(日銀短観)に似た統計といえます。米主要統計の中でも最も早く月初めに発表されるため、市場関係者の注目度が高く、景気の先行指標とされています。一般に好不況の判断の境目とされる50%を割れると景気後退で、50%を超えると景気拡大と判断されます。GDPとの関連性を持たせるために2008年1月分の統計より算出方法が変更され、現在は「新規受注・生産・雇用・入荷遅延・在庫」の5項目(比率はそれぞれ20%)につき、「増加、同じ、減少」の回答結果をもとに算出する。民間調査機関13社の予測値(中心値)が前もって出回るので、リリース時にはそのギャップも重要になります。

製造業回答者の声WHAT RESPONDENTS ARE SAYING …

1Chemical Products 化学製品対象事業の売上は前月比で軟化し、収益は 12% 減少した。在庫日数は増えている。
2Transportation Equipment 輸送機械景気好調が継続。半導体チップ不足の影響は鈍化しており、アジアでの新型コロナウイルスの復活の減少は、チップ以上に生産に影響を与えている。
3Food, Beverage & Tobacco Prod 食品・飲料・煙草在庫が多過ぎる状態で、当社は、繁忙期がどのくらいの速さでどのくらいの規模で始まるのか、ひやひやしている。今後数週間でそれが見られるようになるだろう。
4Petroleum & Coal Products 石油・石炭製品多くのグループの供給はゆっくりと増加するも、需要が追いついていないように見え、価格が安定するか上昇する原因となっている。
5Machinery 一般機械電子部品不足に苦戦が続いている。直接労働力の機械工不足のため、幾つかの小規模な機械工場が (製造) 生産のペースを調整している。
6Computer & Electronic Products         コンピューター・電子製品顧客からの需要は依然根強いが、その多くは、制約のため製品を入手できない懸念があるためだ。彼らは買い溜めしている。音楽が止まり皆の在庫が膨れ上がる時、市場は清算されるだろう。
7Primary Metals    一次金属需要は軟化しているが、当社は、在庫を補充するために生産を続けている。
8Miscellaneous Manufacturing その他の製造ビジネス環境は良好で、需要は旺盛だ。追いつくのに十分な原材料の供給を確保することは、依然課題である。
9Nonmetallic Mineral Products 非金属鉱物製品全体として、原材料の入手可能性が大幅に改善された。しかしながら、トラック輸送の問題は続いており、一部の業界では生産能力が逼迫したままである。セメント・鉱物会社が需要を満たすため全力を尽くすにつれ、維持保全の問題による中断時間が増えるのではないかとの懸念が高まっている。
10Plastics & Rubber Products  プラスチック・ゴム製品年末まで注文は依然として好調だが、顧客が注文を解約するか、2023年に延期するかのいずれかで、注文を引き戻し始める可能性があると感じている。