4. 中国の製造業景況感
財新/マークイットが1日発表した6月の中国製造業購買担当者景気指数(PMI)は51.7と前月の48.1から上昇し、1年1カ月ぶりの高水準となった。新型コロナウイルス対策のロックダウン(都市封鎖)が解除され生産が大きく回復したことが背景。景況改善・悪化の分岐点となる50を4カ月ぶりに上回った。市場予想は50.1だった。生産指数は2020年11月以来の高水準を回復。新規受注指数は約1年ぶりの輸出受注増加に支援され4カ月ぶりの高水準となった。サプライチェーン(供給網)の制約が緩和し納期が6月に安定した。ただ、採用にはなお慎重で雇用指数は3カ月連続で50を下回った。財新智庫のシニアエコノミストは「コロナ後の回復が引き続き経済のテーマだが、その基盤は強固とは言えない」と指摘。労働市場の弱さを背景にした家計の所得減少と期待低下が需要回復を弱めているとし、感染拡大で影響を受けた労働者や低所得層などを対象とした政策支援が必要との見方を示した。
6月の中国サービス部門購買担当者景気指数(PMI)は54.5と前月の41.4から上昇し、2021年7月以来の高水準となった。景況改善・悪化の分岐点となる50を上回るのは2月以来4カ月ぶり。新型コロナウイルス対策の規制が緩和されたことで需要が回復した。ただ企業は雇用には依然として慎重だった。軟調な不動産市場や個人消費、感染再拡大を巡る懸念などが引き続き経済の逆風となっている。中国本土の週末の新型コロナ新規感染者は300人以上と、6月下旬の数十人から増加。ここ数日、感染者が増えている。6月30日に発表された中国国家統計局の6月非製造業PMIも4カ月ぶりに50を上回り、13カ月ぶりの高水準を記録していた。小売業や道路運送業など、新型コロナに関する制限で大きな打撃を受けた業種で需要が回復した。財新のPMIでは新規事業指数が52.4と前月の44.8から上昇し、年初来の高水準を付けた。輸出受注の減少ペースも鈍化した。投入価格は前月とほぼ変わらず物価圧力も和らいだ。ただ雇用指数は6カ月連続で50を下回った。コスト削減策やコロナ禍での退職が背景。その上で「労働市場の弱さを背景にした家計の所得減少や期待低下が需要回復を弱めている。従って政策支援は感染拡大で影響を受けた従業員やギグワーカー、低所得層に焦点を当てるべきだ」と述べた。
※PMI(中国製造業購買担当者景気指数)は全国の製造業約820社の購買担当者を対象にしたアンケート調査。生産や受注について50を上回ると拡大,下回ると減少を示す。非製造業には建設,郵便,ソフトウェア,航空,鉄道,小売り,ケータリングが含まれる。
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