1. 米製造業景況感指数:製造業回答者の声
Manufacturing PMI® at 53%
June 2022 Manufacturing ISM® Report On Business®
- New Orders, Production and Backlogs Growing
新規注文、生産、受注残は増加基調
- Employment Contracting; Supplier Deliveries Slowing at a Slower Rate
雇用は縮小;サプライヤー出荷は緩慢な遅れ
- Raw Materials Inventories Growing; Customers’ Inventories Too Low
原材料在庫は増加;顧客在庫過少
- Prices Increasing at a Slower Rate; Exports and Imports Growing
価格は緩慢な上昇基調;輸出と輸入は増加
- Record-Long Lead Times for Capital Expenditures and Production Materials
設備投資と生産用原料は記録的な長納期
【解説】米金融市場で景気後退懸念が高まっている。米サプライマネジメント協会(ISM)が1日発表した6月の米製造業景況感指数は53.0と、前月から3.1ポイント低下した。2020年6月以来2年ぶりの低水準で、調査会社ファクトセットまとめの市場予想(55.0)を下回った。新規受注が低調で指数を押し下げた。弱い経済指標が相次ぎ、長期金利は一時、1カ月ぶりの低水準まで下げた。ISM指数は月間の米主要指標で最も早く公表され、景気の先行指標として注目度が高い。50を拡大・縮小の分岐点として、50を上回ると拡大、下回ると縮小を示す。「新規受注」「生産」「雇用」「入荷遅延」「在庫」の5つの指数をもとに景況感の総合指数を算出する。今回注目を集めたのは新規受注指数だ。前月比5.9ポイント減の49.2に低下し、20年5月以来の50割れとなった。米国野村証券のエコノミストは「生産活動の先行きを示す新規受注指数が50割れとなり、景気後退懸念は一層強まった」と述べた。同社は22年10~12月期に米経済が景気後退入りすると予想しているが、7~9月期から始まる可能性が出てきたと指摘している。米シティグループは1日のメモで「需要が緩やかになっているか、安定してきたことを示唆している」と指摘した。ここにきて景気の減速を示す指標が相次ぐ。6月末公表の5月の個人消費支出(PCE)では消費の伸び鈍化が明らかになった。同中旬発表の5月の住宅着工件数は前月の改定値から14.4%減った。新規受注指数が約2年ぶりに拡大と縮小の節目である50を下回ったほか、雇用指数が2カ月連続で低下。連邦準備理事会(FRB)の積極的な金融引き締めで景気が冷え込みつつあることが改めて確認された。消費の対象がモノからサービスに回帰していることが減速の一部要因になっているとみられるが、このところの経済指標で金利上昇による需要減退が示されている。銀行エコノミストは「投資支出が弱まり始めており、経済の急速な減速が改めて示された」との見方を示した。
米ISM製造業景況感指数 |
製造業約350社の購買担当者に対し受注や生産状況をアンケート調査により聞き取りし、月初めの第1営業日(その2日後に非製造業を公表)に公表している統計。日本の企業短期経済観測調査(日銀短観)に似た統計といえます。米主要統計の中でも最も早く月初めに発表されるため、市場関係者の注目度が高く、景気の先行指標とされています。一般に好不況の判断の境目とされる50%を割れると景気後退で、50%を超えると景気拡大と判断されます。GDPとの関連性を持たせるために2008年1月分の統計より算出方法が変更され、現在は「新規受注・生産・雇用・入荷遅延・在庫」の5項目(比率はそれぞれ20%)につき、「増加、同じ、減少」の回答結果をもとに算出する。民間調査機関13社の予測値(中心値)が前もって出回るので、リリース時にはそのギャップも重要になります。 |
製造業回答者の声WHAT RESPONDENTS ARE SAYING …
1 | Chemical Products 化学製品 | 新規注文は安定してきており、増加していない。 |
2 | Transportation Equipment 輸送機械 | 輸送機器に対する需要は、引き続き底堅い。 |
3 | Food, Beverage & Tobacco Prod 食品・飲料・煙草 | ビジネスに関し、数量は予想より遅れているが、収益は予算と同じ歩調だ。海上輸送費は漸く少し下がり始めている。秋に向けて既に大量の注文を受けており、心強い状態だ。 |
4 | Fabricated Metal Products 金属加工製品 | 景気は依然安定している。一部の顧客は、在庫が多過ぎるため注文をどんどん出している。当社は、早めに注文を望む顧客からの出された注文を埋め戻すことができるので容量規模を失うことはない。 |
5 | Electrical Equipment, Appliances & Components 電気機器・電化製品・部品 | 注文と生産は引き続き堅調だが、材料の入手可能性が当社を妨げている。受注残を食いつぶすのに十分な時間がない。 |
6 | Machinery 一般機械 | 当社のサプライヤーは注文の軟化を経験している。当社は、2021年と2022年の初めを通して過去と同じ高水準で依然操業している。 |
7 | Computer & Electronic Products コンピューター・電子製品 | 受注残は多いが、今月の受注は鈍化している。 |
8 | Primary Metals 一次金属 | 供給はある程度落ち着いているように見えるが、何に落ち着いているのかは疑問が残る。アルミニウム材料のコストの削減と(継続的な)限られた供給は、興味深い組み合わせとなっている。実際には今月の回答より多くの質問がある。 |
9 | Petroleum & Coal Products 石油・石炭製品 | 市場の継続的な引き締め、ガスと軽油価格の上昇、限られた労働力・運転手不足は、コスト増に相当する。横ばいを示している市場は殆どない。 |
10 | Apparel, Leather & Allied Products 衣料皮革製品 | 当社が顧客から聞いているのは、在庫水準が高く、売上が落ち込んでいるとのことだ。在庫が需要に対して適切に平準化されるまで、今後数か月で注文が減少すると予想する。 |