5. 内閣府景気ウォッチャー調査
5月の現状判断DI(季節調整値)は、前月差3.6ポイント上昇の54.0となった。家計動向関連DIは、飲食関連等が上昇したことから上昇した。企業動向関連DIは、非製造業等が上昇したことから上昇した。雇用関連DIについては、上昇した。5月の先行き判断DI(季節調整値)は、前月差2.2ポイント上昇の52.5となった。家計動向関連DI、企業動向関連DI、雇用関連DIが上昇した。なお、原数値でみると、現状判断DIは前月差1.9ポイント上昇の52.6となり、先行き判断DIは前月差3.3ポイント上昇の51.3となった。今回の調査結果に示された景気ウォッチャーの見方は、「景気は、緩やかに持ち直している。先行きについては、緩やかな持ち直しが続くとみているものの、ウクライナ情勢や中国におけるロックダウンに伴う影響も含め、コスト上昇等に対する懸念がみられる。」とまとめられる。
※地域の景気に関連の深い動きを観察できる立場にある人々の協力を得て,地域ごとの景気動向を的確かつ迅速に把握し,景気動向判断の基礎資料とすることを目的とする。調査は毎月,当月時点であり,調査期間は毎月25日から月末である。本調査業務は,内閣府が主管し,下記の「取りまとめ調査機関」に委託して実施している。各調査対象地域については,地域ごとの調査を実施する「地域別調査機関」が担当しており,「取りまとめ調査機関」において地域ごとの調査結果を集計・分析している。
2.サプライチェーン関連記事抜粋:令和4年5月1日~5月31日
※後段に関連する専門用語と企業名を詳述している。
| 主題 | 概要 |
1 | 経済安全保障ようやく一歩:推進法成立 | ウクライナ侵攻で重要度増す 米欧並み水準、なお遠く |
2 | 製油所、次世代エネ拠点に | 出光、輸入アンモニア貯蔵 ENEOS、再生航空燃料を生産 |
3 | ワクチン原料・資材 国産に | タカラバイオ:原薬の試薬投入 藤森工業:培養バッグ増産 |
4 | 上海港 待機船最大120隻 | 都市封鎖、コンテナ正常化遠く 解除後、各地で混雑懸念 |
5 | ブルー水素 欧米が基準強化 | 国際基準 日本出遅れ 生産戦略、資金集めも打撃 |
6 | 海運三社、純利益2.3兆円 | コンテナ運賃高止まり 前期:7倍に増加、円安も寄与 |
7 | 中国EV、供給過剰の懸念 | 世界一市場で各社が生産能力増強 稼働率50%割れ予測も |
8 | トヨタ、資材費上昇1.45兆円 | 過去最大、今期は営業益2割減 新車に価格転嫁が焦点 |
9 | タイ、循環型経済へ着々 | バイオマス発電、牽引 味の素、もみ殻を燃料に |
10 | パナソニック、ソフト新会社上場へ | 巨額買収ブルーヨンダ―中心に設立 供給網の効率化狙う |
11 | 東京エレクトロン 今期も最高益 | 部材調達巧み、海外勢に差 長いスパンの生産計画を伝えて部材を確保 |
12 | 国産材活用東北牽引 | 木造公共施設、秋田34%で首位 ウッドショックも影響:森林荒廃防ぐ |
13 | ESGの株主提案増加 | 米で最多583件:監視厳しく コロナで格差に焦点 |
14 | 身代金で100億円奪取 | 流出データを独自分析 世界最大級のサイバー攻撃集団CONTI |
15 | 再生エネ、電機に「産地証明」:「非化石証明書」脱炭素価値 | 日本卸電力取引所JEPX、発電方法にお墨付き 先行する欧米と歩調合せる |
16 | 銅不足、脱炭素の壁に | 10年先物高騰:過去20年で5倍超に EVに影響 |
17 | 中国石炭大手増産へ転換 | ロシア侵攻でエネルギー高騰 政府、脱炭素棚上げ:対米悪化も背景 |
18 | 今期、経営者に3つの不安 | 原料高・供給網混乱・侵攻長期化 円安次第で収益上振れ |
19 | 中国海運に「軍民統合」の影 | 世界4位のCOSCO、ロシア原油の中国への輸送継続 中国国防省;コンテナ船による補給成功発表 |
20 | 水素で製鉄、CO2大幅減 | 欧州大手SSAB,鋼材供給 ボルボで採用、日本にも |
≪用語解説:記事内の用語と企業、統計図表を確認しましょう≫
ブルー水素 |
燃焼時に二酸化炭素(CO2)を出さない水素が、造り方次第で「クリーン」とみなされない可能性が出てきた。欧州連合(EU)や米国は、製造時に出るCO2の削減基準を相次ぎ引き上げた。基準に満たない生産計画は今後、資金集めが難しくなる恐れもある。欧米のルールが国際標準になれば、日本の水素生産にも影響が出かねない。燃料電池車などに使用する水素は、水を電気分解したり天然ガスを改質したりして造る。造り方で大きく3つに分けられ、再生可能エネルギーで水を電気分解して造り出す水素を「グリーン水素」と呼ぶ。化石燃料で造り、製造時に生じるCO2を地下に貯留するなどして減らしたものを「ブルー水素」とし、何も手立てをしないものを「グレー水素」とする。欧米がクリーンとする基準を厳しくしたのはブルー水素だ。EUの欧州委員会は2022年1月、どんな事業や製品が持続可能かを示す「タクソノミー」で、化石燃料の採掘から水素の製造、消費までに発生するCO2を7割超減らした水素をクリーンとみなす規則を施行した。今後、基準に満たない水素はEUではクリーンとは認められにくくなる。  |
トヨタ、資材費上昇1.45兆円 |
22年3月期の営業利益は日本企業で過去最高になったが、原材料高は鋼材や非鉄金属、樹脂と幅広い分野に及び、物流コストも跳ね上がっている。近健太最高財務責任者(CFO)は会見で「過去に例がない大きな影響だ」と危機感をあらわにした。影響は日本と海外で半々。トヨタは日本製鉄との鋼材の価格交渉で大幅な値上げをのんだ。トヨタと取引する化学メーカー幹部も「供給不足も続き、自動車向けで値上げが受け入れられないなら他の産業に製品を回したい」と強気だ。トヨタのカイゼン活動の成果は年3千億円が目安で、22年3月期に続き原材料高を補えない。  |
タイ、循環型経済へ着々 |
タイでバイオマス(生物資源)エネルギーの導入が加速している。循環型経済の構築を目指す国家戦略のけん引役と目されており、化石燃料を代替する主要電源の一つに育成する考えだ。製造現場では新たな取り組みが広がっており、草分けとされる味の素はもみ殻を燃料とするコージェネレーション(熱電併給)システムを増設する。ウクライナ危機に伴う資源価格の高騰もあり、バイオマスの存在感が一層高まりそうだ。
 タイは周辺国と比べてもバイオマスのエネルギー利用で先行している。国際再生可能エネルギー機関によると、タイにあるバイオマス発電設備の合計容量は東南アジアで最も大きく、2位のインドネシアの2倍以上の規模だ。製造現場では多様な取り組みが広がっている。変革を先導するのは国内外の大手企業だ。  |
ウッドショック |
2021年3月頃から、住宅の柱や梁(はり)、土台などに使う木材の需給がひっ迫して木材の不足により価格が高騰し、大きな混乱が生じている状況のこと。かつてのオイルショックになぞらえて名付けられた言葉です。現在、日本の住宅メーカーが使う木材の7割を輸入材に頼っており、これは戦時中の森林の伐採、戦後に住宅需要がひっ迫し、更に伐採されたことにより国内の木材は減少した。木材は植林にしてから市場に出るまで30年以上の時間がかかるため、海外からの輸入に頼るようになった。また、国内の森林が回復する前に林業従事者の減少により国内の林業は衰退してしまった。
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ESGの株主提案増加 |
ESG(環境・社会・企業統治)の視点で企業に経営などの改善を求める株主提案が増えている。格差や気候変動の問題に対する投資家の視線が厳しくなり、米国では2022年のESG関連の株主提案が過去最多になった。日本でも運用大手がJパワーに温暖化対策の強化を求めるなど同様の動きがある。多様化する投資家の声に企業も一段の対応を迫られる。
 ESG関連の提案は世界の流れだ。英運用会社などが英スーパーのセインズベリーに、7月の総会に向け全従業員やその家族が余裕をもって暮らせる「実質生活賃金」の確保を求める提案を準備した。日本では5月、欧州の機関投資家がJパワーに温暖化ガス排出実質ゼロ達成への事業計画の開示などを求める株主提案を出すと発表した世界持続的投資連合(GSIA)によると、20年の世界のESG投資は総額35兆3000億ドル(約4600兆円)と16年比で5割増えた。ESG対応が不十分とみなされた企業は投資対象から外される場合もある。ウクライナ侵攻で企業に社会的責任を問う声は一段と強まる。企業が持続可能性に関する方針をもち、自ら企業価値を高める必要がある。
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CONTI コンティ |
Contiは、2020年5月に初めて確認されたランサムウェアの一種。ダークサイドなどこれまでのランサムウェアグループは、医療機関などは標的にしない事を明言しているグループが多かったが、Contiは多数の医療機関を問答無用で標的にするなどその凶悪さが注目を集めている。米国セキュリティ企業Palo Alto Networksは「私たちが追跡している数十のランサムウェアギャングの中でも際立って冷酷なランサムウェアの一つ」と表現している。 FBIが発表したフラッシュアラートによると、医療機関や救急医療機関のネットワークシステムを標的にした攻撃が1年間に少なくとも16件確認されている。Contiを開発しているのは、ロシアのサンクトペテルブルクとウクライナを拠点にしていると推測されるハッカーグループのウィザード・スパイダーで、同グループはランサムウェアRyukも運用している。サービスとしてのランサムウェア(RaaS)を提供しているが、他のグループとはやや異なり、身代金の一部を報酬としてアフィリエイトに支払うのではなく、ランサムウェアを運用した攻撃者に賃金を支払っている。 |
銅不足、脱炭素の壁に |
長期の銅先物価格が高騰している。10年先が1トン9000ドル近辺と、期近と同水準の高値が2032年まで続くことを示唆する。理由は脱炭素で需要が増える一方、供給が追いつかない可能性が高いためだ。銅は電気自動車(EV)や太陽光発電装置の生産に欠かせないが、必要量の2割が不足するとされる。長期の高値継続が示す銅不足は脱炭素の大きな障害になろうとしている。
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今期、経営者に三つの不安 |
企業経営者が先行きに慎重な見方を強めている。上場企業の2023年3月期の純利益は2%増と前期の37%増から急減速する見通しだ。原材料高騰やロシアによるウクライナ侵攻の長期化、中国の都市封鎖(ロックダウン)などへの不安から、採算の悪化を見込む経営者が多い。決算会見などでのコメントからリスク要因を探った。
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SSAB AB:スウェーデンの鉄鋼メーカー |
SSAB AB、以前のSwedish Steelは、1978年に設立されたスウェーデンの会社で、原材料を鉄鋼に加工することを専門とする。最大の株主はAktiebolagIndustrivärdenとフィンランド政府。本社はストックホルム。SSABは、様々な分野や用途に標準化と専門化された鉄鋼および鉄鋼製品の生産に関与する。鉄鋼生産に加えて、同社は建築プロジェクトの実行中に設計会社とも提携し、研究開発部門は、新しいプロジェクトにカスタムソリューションを提供するために顧客と協力する。2014年、SSABは、スウェーデン政府が後援する4年間のパイロットプログラム組織「SteelEco-System」のメンバーになる。2021年、SSABは化石燃料を使用せずに製造された最初の鋼を製造した。コークス化プロセスを必要とする従来の方法の代わりに水素を使用するプロセスで作成された最初の化石を含まない鋼は、試験的にボルボに納入された。 |