2022年5月報告

5. 内閣府景気ウォッチャー調査

4月の現状判断DI(季節調整値)は、前月差2.6ポイント上昇の50.4となった。家計動向関連DIは、サービス関連等が上昇したことから上昇した。企業動向関連DIは、製造業等が上昇したことから上昇した。雇用関連DIについては、上昇した。4月の先行き判断DI(季節調整値)は、前月差0.2ポイント上昇の50.3となった。家計動向関連DIが低下したものの、企業動向関連DI、雇用関連DIが上昇した。なお、原数値でみると、現状判断DIは前月差1.8ポイント上昇の50.7となり、先行き判断DIは前月差0.4ポイント低下の48.0となった。

今回の調査結果に示された景気ウォッチャーの見方は、「景気は、新型コロナウイルス感染症の影響は残るものの、持ち直しの動きがみられる。先行きについては、感染症の動向への懸念が和らぐ中、持ち直しへの期待がある一方、ウクライナ情勢による影響も含め、コスト上昇等に対する懸念がみられる。」とまとめられる。

※地域の景気に関連の深い動きを観察できる立場にある人々の協力を得て,地域ごとの景気動向を的確かつ迅速に把握し,景気動向判断の基礎資料とすることを目的とする。調査は毎月,当月時点であり,調査期間は毎月25日から月末である。本調査業務は,内閣府が主管し,下記の「取りまとめ調査機関」に委託して実施している。各調査対象地域については,地域ごとの調査を実施する「地域別調査機関」が担当しており,「取りまとめ調査機関」において地域ごとの調査結果を集計・分析している。

2.サプライチェーン関連記事抜粋:令和4年4月1日~4月30日

 主題概要
1供給網デジタル化を支援コロナ禍で安定重視 材料高の影響を可視化・海外取引先の被災確認
2脱ロシア産、調達綱渡りEU、まず石炭の禁輸案発表 サウジなど説得焦点
3原発部品の輸出後押し「発電所全体」を転換 納入や規格取得を支援
4JX金属、リチウム再利用廃電池から抽出、住友鉱山も参入 EV需要、国内安定供給
5海外向け電子商取引、中小を後押し 越境ECコロナ禍で需要基盤作り急ぐ Ichigoは和菓子など定額アプリ:サブスクサービス
6感染拡大、コロナ保険苦境需要予測など設計に穴 給付削減や新規停止相次ぐ
7インド、電池産業育成急ぐ:高機能電池EV化にらみ官民先行投資:政府、生産誘致へ3000億円。リライアンス:欧州企業相次ぎ買収
8EV電池素材、米欧で増産脱中国政策が追い風に 三菱ケミカル:電解液を二倍に 東海カーボン:負極材60万台分
9半導体装置、旧世代に特需中古品価格、2年で2倍 ニコン、露光新製品投入
10日立造船、ゴミ見える化:最適なゴミ収集車運行ルート作成収集・燃焼・監視AIで最適に 自治体に導入、人員1/3
11中国半導体、台湾でスパイ:技術者を違法獲得香港企業装い高度人材獲得 背景に国産化の遅れ
12再生航空燃料、国産化探る原料調達・製造費・技術力 官民で協議会、対応策議論
13中華スマホ、米部品依存4割:完全な内政は難しい20年機種の1割から急増 5G半導体の代替難しく
14トウモロコシ迫る最高値:世界的インフレ拍車もウクライナ危機で供給不安 ガソリン代替燃料の需要増
15機内食大手、空以外に活路:シンガポールSATS社国内外に大型新工場 企業・消費者向け食品拡大
16核融合発電、脱炭素で弾み新興参入、英トカマク・エナジーなどが3強に 30年代稼働へ投資熱

≪用語解説:記事内の用語と企業、統計図表を確認しましょう≫

供給網デジタル化を支援
調達業務のデジタル化を後押しするスタートアップのサービスが相次いでいる。見積もり管理ソフトを手掛けるA1Aは調達部品に含まれる材料を効率的に管理するシステムを開発する。新型コロナウイルス禍などを背景に先行きの不透明感は増している。安定的なサプライチェーンの構築に苦心する製造業を支援する。主要顧客に完成車メーカーやティア1(1次下請け)を想定する。利用企業は交渉段階からシステム上でやり取りしデータを引き継いで活用する。調達部品だけでなく原材料であるアルミやステンレスの使用量や契約時点の価格までを自動登録する仕組み、その後、材料の実勢価格を入力すれば、調達コストへの影響を即座に試算できる。ティア1の場合、完成品メーカーにデータを示して製品への価格転嫁の交渉に役立てられる。材料価格が下落した局面では、下請けに対して価格見直しを打診する際にも利用できる。ティア2以下には製造設備や1分あたり生産量などを登録してもらう仕組みも検討する。材料高の影響を緩和するため、加工方法の変更や生産工程の見直しといったカイゼン活動に共同で取り組めるようにする。製造業にとって安定的な供給網の構築は喫緊の課題だ。調達部門ではデジタル化が遅れており、購買担当者の異動時などに情報やノウハウが散逸するリスクを抱えてきた。収益部門ではないため、大手企業でも投資が限られるのが実情だった。その中でコロナ禍が起き、供給網を安定的に維持する重要性は増した。日本政策投資銀行の2021年調査によると、供給網見直し契機としてコロナ禍を挙げた回答は約6割に達した。ロシアのウクライナ侵攻も長期化の様相をみせており、供給網が混乱する懸念は高まる。
JX金属、リチウム再利用
国内の非鉄金属大手が廃電池から希少金属リチウムをリサイクルする事業を相次ぎ始める。世界的な脱炭素の要請を受け、電気自動車(EV)など電動車向けが伸びている。欧州では規制で電池にリサイクル材の使用を義務付ける。将来の供給不足懸念も浮かぶ中、リサイクル材料を安定供給できる仕組みづくりを急ぐ。
越境EC:Cross-border e-commerce
インターネット通販サイトを通じた国際的な電子商取引。日本ではクロスボーダートレード(CBT)とも呼ばれる。越境ECは日本国内のECサイトと同様に、インターネットを使った通信販売を指すが、自国内向けのサイトではなく、外国語のサイトを設けたり、海外のeマーケットプレイスに出店しながら多言語多通貨での対応を行い、国内から海外に発送する形態を用いるため、越境ECサイトを運営する企業側は、世界各国に直接出店するリスクやコストの軽減につながり、且つ商圏は広くなるため、初期投資額を抑えながら世界進出を狙える。経済産業省によれば、2020年に越境EC市場は約114兆円規模にまで成長すると予想されている。日本国内ではECサイトを運営する9割の企業で販路拡大の必要性があると感じており、この内過半数の企業が越境ECに興味があると回答している。越境ECは通販とはいえ貿易が絡む取引となるため、サイトの運営会社や越境ECコンサルタントや貿易に詳しいアドバイスのできる越境EC専門の会社、ECワンストップサービスを提供する会社に相談・伴走支援を依頼することが一般的となっている。2013年の先進国のインターネット利用人口は2005年に比べて1.6倍に過ぎないが、途上国では同じ期間で4.4倍に増えており、ECサイトの国際的展開に取り組む企業は増えると予想されている。また、2014年から2018年までの間に、日米中三か国相互間の越境EC規模は、日本は約1.4倍、米国は約1.6倍、中国は約2.3倍の規模となり、日米中間における越境EC による購入総額合計は、2018 年までに約4.4兆円にまで拡大する見込み。販売先の国によっては偽造のクレジットカードが使用されたり、配達業者のミスで商品が破損するリスクがあるがチャージバック保険などで保証されるケースもある。また消費者が関税を支払うことを嫌って実際よりも低い価格を送り状に記入するよう求めてくることもある。越境ECは輸出の一形態で、取引に適用される法律は、消費者が住む国のものによるため、販売先の法律を調べる必要がある。
コロナ保険、感染拡大で苦境
新型コロナウイルス禍で需要が高まったコロナ保険が苦境に陥っている。保険スタートアップのジャストインケース社が既契約の入院給付金を従来の1割に減らす異例の対応に踏み切ったほか、大手保険会社による販売停止や保険料引き上げが相次ぐ。想定以上に感染者が膨らみ、保険収支が悪化したためだ。ニーズをとらえて商品投入を急いだものの、需要予測など商品設計が甘くなり、不十分な金融商品になった可能性がある。
半導体装置、旧世代に特需
旧世代の半導体製造装置への需要が高まっている。回路の形成に使う露光装置の中古品の価格は2年前に比べ2倍になった。納期が延びている新品の代替需要に加えて、半導体の国産化を進める中国から成熟した技術の製品の引き合いが強まり、特需のような状況になっている。中古の半導体製造装置は過去にない活況で装置を売り出すと直ちに他のメーカーが買い付けにくる状況だと言う。半導体は需給の逼迫を背景に、メーカーによる増産投資や新たな製造ラインの立ち上げが相次ぐ。日本半導体製造装置協会(SEAJ)によると、日本製の装置の販売額は2021年度に20年度比41%増の3兆3567億円と、過去最高を更新したと見込む。ただ、旺盛な装置需要に供給が追いついておらず、新品の納期は1年から1年半ほどに伸びている。代替品としての需要が増えたのが1カ月程度の短期間で調達できる中古装置だ。大手のリース会社やブローカーなどが、先端半導体を扱うメーカーから使わなくなった装置を仕入れ、汎用半導体などを手掛ける他のメーカーに売り出している。
再生航空燃料、国産化探る
政府と産業界は再生航空燃料(SAF)の国産化へ乗り出す。廃食油や植物などを原料とするSAFは「空の脱炭素」に向けた切り札となる。世界で需要が増えるのは確実で、燃料調達を巡る海外主要国との競争も激しくなる。国産体制をつくるため、原料調達、コスト高、技術力という3つの課題の克服を急ぐ。国土交通省や経済産業省は22日、SAFのサプライチェーンを整えるための官民協議会を設けた。SAFは原油からつくる従来のジェット燃料に混ぜて使う。SAFに置き換えると燃料の製造から航空機の運航までの二酸化炭素排出量を従来より7~9割減らせる。次の主力燃料となる可能性が高い。国交相は「SAFは航空分野の脱炭素化に不可欠の手段だ」と強調した。

持続可能な航空燃料 Sustainable Aviation Fuel; SAF
持続可能な航空燃料または再生可能代替航空燃料とは、ジェット機で使用される高度な航空バイオ燃料種別の名称で持続可能なバイオマテリアル円卓会議 (RSB) などの信頼できる独立した第三者によって持続可能なものとして認定される。この認証は、世界標準化団体ASTM インターナショナルによって発行された安全および性能認証に追加され、定期旅客便での使用が承認されるためには全てのジェット燃料が要件を満たす必要がある。SAFの持続可能性認証は、主にバイオマス原料に焦点を当てた燃料製品が、長期的な地球環境・社会・経済の「トリプルボトムライン」の持続可能性を考慮した基準を満たしていることを証明するもの。欧州連合域内排出量取引制度などの多くの炭素排出規制制度の下では、認証を受けたSAF製品は、関連する炭素コンプライアンス債務費用の免除を受けることができ、従来の化石ベースのジェット燃料よりも環境に優しいSAFの経済的競争力が僅かに向上する。しかし当面は、SAF製品が従来のジェット燃料と同等の価格を実現し、広く普及するために、様々な関係者の協力を得て、商業化や規制上のハードルを克服しなければならない課題が幾つかある。
トウモロコシ迫る最高値
トウモロコシの国際価格が最高値に迫っている。世界有数の輸出国のウクライナからの供給不安に加え、価格が高騰するガソリンの代替としてトウモロコシ由来のエタノールの需要が急増するなど需給が逼迫しているためだ。トウモロコシは小麦やコメなどほかの穀物と比べ用途が食用から産業用まで幅広い。世界経済への影響は大きく、インフレを加速させる懸念が出てきた。

米国内のトウモロコシ消費の内、3割以上がエタノールに使われている。原油の輸入依存度を低減しようと、エタノールなど再生可能エネルギー使用の拡大を義務付けたエネルギー政策法が05年に策定されてから米国内のエタノール需要は3倍以上に増えている。
核融合発電
原子力発電は「核分裂時」に発生するエネルギーを利用して発電する一方、「核融合発電」は、「核融合時」に発生するエネルギーを利用して発電する新たな原子力発電で、21世紀後半の実用化を目指して開発中の未来技術。現在の原子力発電では、ウランやプルトニウムなどの「重い」原子を核分裂させてエネルギーに変換するが、核融合発電は、水素やヘリウムなどの「軽い」原子を核融合させて発生するエネルギーを利用する。太陽や星の光も全てこの「核融合反応」によるもので、核融合炉を別名「地上の太陽」と呼ぶ場合がある。 核融合発電のメリット:核融合発電では、ウランやプルトニウムなどの希少な放射性物質を使わずに、水素やヘリウムといった、地球上に広く存在する物質を利用することができるため、資源の枯渇問題が発生しないとされ、核分裂で起こる連鎖反応がないので暴走のような深刻な事故が起こる可能性がない。寧ろ僅かな条件で、核融合反応が止まってしまい、再開に苦労することがあるが、安全性は高い。また、厳密に言うと放射性廃棄物も発生するが、セメントで固めてステンレス製の容器に閉じ込め、地中深くに埋めるなど対策を講じることができるため、放射性廃棄物の処理に困ることがない。核融合発電のデメリット:核融合反応を起こすには、超高温、超真空という特殊な環境が必要なため、実験段階から莫大な予算がかかり、放射性廃棄物が出ないとは言え、炉壁などに中性子が当たってこれらが有害な放射性物質に変化したり、三重水素なども発生するため、その対策も必要と言えるが、これらの課題が解消されれば、核融合発電の実用化が見えてきます。核融合炉の展望:核融合発電は、エネルギー資源に乏しい日本にとって、念願とも言うべき技術で、今世紀後半に実用化されると予想されてきたが、2030年ごろまでに前倒しできるのではないかとの見方も出てきた。核融合発電は、超高温プラズマ反応の科学と、大型核融合装置の工学の双方が結び付いて初めて実現する。