3.おわりに:
今回はカタカナ語について考える。新型コロナウイルス疫病いわゆるコロナ禍でマスコミを通じて激しくなったことの一つにカタカナ文字の氾濫がある。もともとインターネットが出てきて氾濫の兆候が見えたが、現下は一層激しくなった感がある。パンデミック、アウトブレーク、アラート、ステイホーム、ソーシャルディスタンス、オーバーシュート、クラスター、ロックダウンなどなど。少し前、都知事が余りにカタカナを振り回すので報道記者が文句を言ったことがあり、知事も少しは修正したが、今度はマスコミが知事以上に使い始めた。
中国唐代の僧玄奘(げんじょう)は、仏典を翻訳する際、幾つかの理由から五種不翻(ごしゅふほん)という考え方で漢文に訳さず梵語の音をそのまま漢字に写した今日においては、外来語をカタカナ表記にするのと似たような音写という技法を用いた。
五種不翻とは、唐の玄奘三蔵が,サンスクリット語の仏教経典を漢訳する際に,翻訳不能のサンスクリット語を五種挙げたもの。 (1) 陀羅尼のような秘密の語。 (2) 薄伽梵のように多義を含む語。 (3) 閻浮樹のように中国にない語。 (4) 阿耨多羅三藐三菩提のように先例のある語。 (5) 般若のように智慧と訳すと深みが表現できない語のことである。
一般的にカタカナ語は新鮮な感覚を与える傾向があるためコロナ禍でもマスコミ報道では和製漢訳語の作成、漢字制限や表記法の統一による日本語の簡易化の努力を行うことなく、外来語を安易にカタカナ語として使用することが多く国民の理解を困難としている。カタカナ語の乱用は豊富な知識を喧伝し、グローバル時代の象徴を誇示していると勘違いする輩が多く、且つ真の意味を理解していないのはもってのほかであろう。上述の五種不翻のような明確な理念に基づく外来語の導入により日本文化の神髄である美しい日本語と日本民族の品性を守っていきたいものである。
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月報編集室:主筆 上原 修 CPSM, C.P.M. JGA 特定非営利活動法人 日本サプライマネジメント協会