2022年8月報告

4. 中国の製造業景況感

財新/マークイットが1日発表した7月の中国製造業購買担当者景気指数(PMI)は50.4と前月の51.7から低下し、市場予想の51.5を下回った。生産、新規受注、雇用の伸び鈍化が背景。上海など中国の主要製造拠点では6月に新型コロナウイルス対策のロックダウン(都市封鎖)が解除され生産が大きく回復していたが、感染再拡大や国内外の需要減退、不動産市場の低迷長期化で回復に陰りが見え始めている。中国国家統計局が6月31日に発表した7月の製造業PMIは49.0と予想外に悪化し、節目の50を再び割り込んだ。キャピタル・エコノミクスの中国担当シニアエコノミストは両統計について、中国の景気回復は経済再開後の一時的な押し上げ効果が薄れ、7月に減速した可能性があると指摘。経済活動が今後数四半期にわたりトレンドを下回るという自社の予想と一致する内容だと述べた。財新のPMIでは生産指数が2カ月連続で50台を維持したものの、前月から大幅に低下した。需要がさえず新規受注の伸びも鈍化した。

<雇用が低調>

雇用指数は4カ月連続で低下し2年3カ月ぶりの低水準となった。コスト削減や売上高の低迷、退職者の欠員補充をしていないことが理由という。財新智庫のシニアエコノミストは「需給状況の回復は製造業の労働市場には波及せず縮小が続いた」と指摘。「需要が低迷する中、コスト削減志向の強い企業は人員増強に慎重だった」と述べた。唯一明るい材料となったのは、利益率を圧迫してきた投入コストの伸びが小幅にとどまったことだ。ただ需要の弱さから3カ月連続で販売価格の引き下げを余儀なくされた。

<消費の回復が鍵>

第2・四半期の中国経済成長率は大幅に減速した。7月の中国共産党中央政治局会議では、これまで訴えてきた年間経済成長目標の達成に言及せず、経済にとって最良の結果を実現するため最大限努力する方針を示した。また、経済を回復軌道に戻すために第3・四半期が重要になると強調した。その上で、大規模な景気刺激策は行われないと予想。「既存の政策を効果的に実施することがより現実的な選択肢だ」と述べた。華宝信託のエコノミストは「下半期は消費の回復を加速することがより重要になる」との見方を示した。中長期的に不動産部門の低迷が続けば、家計や経済全体に影響を及ぼすと述べた。不動産部門は2015年にも大きな圧力を受けていたが、政策当局者は家計の債務拡大を許容し、市場を支えていたと指摘した。15年の中国経済は株式市場の暴落、シャドーバンキング部門の崩壊、不動産市場の急落を受け、政府の成長目標に届かなかった。当時はまだ消費が堅調で、今年とは違っていた。

※PMI(中国製造業購買担当者景気指数)は全国の製造業約820社の購買担当者を対象にしたアンケート調査。生産や受注について50を上回ると拡大,下回ると減少を示す。非製造業には建設,郵便,ソフトウェア,航空,鉄道,小売り,ケータリングが含まれる。

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