2024年4月報告

1. 米製造業景況感指数:製造業回答者の声

Manufacturing PMI® at 50.3%

March 2024 Manufacturing ISM® Report On Business®

  • New Orders Growing; Backlogs Contracting

新規注文増加:受注残減少

  • Production Growing; Employment Contracting

生産増加;雇用減少

  • Supplier Deliveries Faster

サプライヤー出荷加速

  • Raw Materials Inventories Contracting; Customers’ Inventories Too Low

原材料在庫減少;顧客在庫過少

  • Prices Increasing; Exports Contracting and Imports Growing

価格上昇;輸出減少、輸入増加

【解説】 

米サプライマネジメント協会(ISM)が1日発表した3月の米製造業景況感指数は50.3と前月比で2.5ポイント改善した。ダウ・ジョーンズまとめの市場予想(48.1)を上回り、好不況の分かれ目となる50を2022年9月以来1年半ぶりに上回った。生産や新規受注が上向き、高金利環境で苦戦が続いていた製造業の景況感に明るさが見え始めている。項目別では新規受注を示す指数が51.4と前月比2.2ポイント、生産活動の指数が54.6と6.2ポイント上昇した。雇用環境を映す指数も1.5ポイント上がり47.4となった。業種別では輸送用機器や石油・石炭製品など18業種中9業種が「好況」と回答した。「不況」と答えたのは6業種で家具やコンピューター・電化製品などだった。

調査対象の企業からは「需要は堅調だ」(化学薬品)との声が聞かれた。今後の見通しについて「受注増を期待している」(輸送用機器)、「大統領選の影響に関する議論が出始めている」(石油・石炭製品)といった声があった。

ISMの製造業景況感は新型コロナウイルス禍から経済活動が正常化し始めた21年ごろは、概ね60前後の高水準だった。米連邦準備理事会(FRB)が金融引き締めに転じたことで低下基調となり、22年10月には50ちょうどとなった。同11月には48.9と50を割り込み、24年2月まで50を下回る「不況」水準となっていた。QUICK・ファクトセットに依ると、2月まで続いていた「不況」は2000年8月〜02年1月以来およそ22年ぶりの長さだった。

米S&Pグローバルが1日発表した3月の米国購買担当者景気指数(PMI、確定値)の製造業は51.9だった。前月から0.3ポイント下がったが、好不況の境目とされる50は3カ月連続で上回った。ISMとS&Pの調査は対象などが異なるが、いずれも製造業は不況から抜け出しつつあるという姿を映している。米ウェルズ・ファーゴの調査グループは「製造業が好況となれば景気全体にとっては朗報だが、FRBのインフレ抑制には逆風となる」と分析する。足元の経済活動が好調なことでインフレ再燃懸念もくすぶり続けるためだ。

米ISM製造業景況感指数
製造業約350社の購買担当者に対し受注や生産状況をアンケート調査により聞き取りし、月初めの第1営業日(その2日後に非製造業を公表)に公表している統計。日本の企業短期経済観測調査(日銀短観)に似た統計といえます。米主要統計の中でも最も早く月初めに発表されるため、市場関係者の注目度が高く、景気の先行指標とされています。一般に好不況の判断の境目とされる50%を割れると景気後退で、50%を超えると景気拡大と判断されます。GDPとの関連性を持たせるために2008年1月分の統計より算出方法が変更され、現在は「新規受注・生産・雇用・入荷遅延・在庫」の5項目(比率はそれぞれ20%)につき、「増加、同じ、減少」の回答結果をもとに算出する。民間調査機関13社の予測値(中心値)が前もって出回るので、リリース時にはそのギャップも重要になります。

製造業回答者の声WHAT RESPONDENTS ARE SAYING …

1Chemical Products 化学製品業績悪化の予測を覆し続けている。需要は引き続き旺盛で、注文経路もしっかりしている。
2Transportation Equipment 輸送機械第2四半期の受注と生産が回復することを期待している。サプライヤーは当社と協力してコスト削減を進めており、これが今年残りの利幅改善と2025年の成長に繋がるだろう。
3Food, Beverage & Tobacco Prod 食品・飲料・煙草相場商品価格は引き続き堅調に推移している。
4Computer & Electronic Products         コンピュータ・電子製品需要は引き続き軟調だが、受注は 「目前に迫っている」と楽観的な見方が強い。第2四半期は好調を期待している。サプライチェーンの課題は最小限のものであり、半導体と一部の電子部品だけが問題になっている。
5Primary Metals   一次金属産業部門は引き続き軟調を経験している。第2四半期後半には受注活動が活発化し、下半期にはこの部門の改善に繋がるとの楽観的な見方がある。航空宇宙・防衛市場は引き続き活発化しており、当社のサプライチェーンでは需要が供給を上回っている。
6Machinery        一般機械見積りと受注に関して、サプライヤーの選択性が高まっている点に注目する。加えて、大企業(老舗企業、投資会社など)による買収の対象となる製造会社の増加が目立っている。
7Fabricated Metal Products        金属加工製品景気は依然堅調であり、予想を達成するか、上回っている。今のところ、継続的な事業に関して、顧客から否定的な話は聞いていない。原材料サプライヤーも同様で、後ろ向きの話は全くない。
8Paper Products   紙製品エネルギー集約型メーカーである当社にとって、エネルギー価格は引き続き懸念事項である。電化への移行によって需要が増加しており、当社は風力発電と太陽光発電にとって理想的な地理でないことから供給が安定していないと言える。
9Petroleum & Coal Products        石油・石炭製品米大統領選の余波が、長期契約交渉に影響を与え始めている。
10Wood Products   木材製品事業活動は増加している。多くのメーカーは、第2四半期の景気が改善し、第3四半期は更に良くなると期待している。多くの製造企業の報告では、第2四半期の予約は始まったばかりとのことだ。