景気動向指数 2021.08

1. 米製造業景況感指数:製造業回答者の声

Manufacturing PMI® at 59.5%

July 2021 Manufacturing ISM® Report On Business®

  • New Orders, Production, & Employment Growing 新規注文、生産,
  • 雇用は全て増加
  • Supplier Deliveries Slowing at Slower Rate; Backlog Growing サプライヤー出荷は緩慢な遅れ;受注残は増加している
  • Raw Materials Inventories Contracting; Customers’ Inventories Too Low原料在庫縮小;顧客在庫過少
  • Prices Increasing; Exports and Imports Growing 価格上昇;輸出入増加

【解説】

米サプライマネジメント協会(ISM)が2日発表した7月の米製造業景況感指数は59.5で前月から1.1ポイント低下した。2カ月連続の低下で、市場予測(60.8程度)を下回った。新規受注が64.9で1.1ポイント低下したほか、生産も58.4で2.4ポイント低下した。しかし、18の対象産業のうち17産業が拡大しており、ISMは、力強い拡大が続いたと前月同様の評価をした。但し、依然として全分野で、長いリードタイム、重要な原材料の不足、商品価格の値上がり、輸送の遅れ、労働者の欠勤・不足、部品不足による工業閉鎖といった供給面の問題に直面していると指摘した。入荷遅延は72.5で2.6ポイント低下し、やや改善したが、「在庫」は48.9で2.2ポイント低下した。前月に約42年ぶりの高さとなった「価格」は6.4ポイント低下したが、85.7で依然として高い。回答企業は「需要は引き続き強く、生産能力を最大まで高めている」(食品・飲料・たばこ製品)と活況を報告する声の一方で、「売り上げは好調だが、半導体不足で工場の一部を動かしていない」(輸送機器)、「働き手をみつけることができず、受注に応えるのに必要な人材の75%しか確保できていない」(一次金属)と供給制約に苦戦する声も相次いだ。

物価に関しては明るい内容だった。仕入れ価格指数は85.7と、過去最高を付けた6月の92.1から低下した。2020年3月以来の大幅な低下だった。供給の制約がなくなるにつれて物価上昇が和らぐとする米連邦準備理事会(FRB)議長の主張を後押しする。

米ISM本部の製造業調査責任者のティモシー・フィオーレは、消費がモノからサービスに戻りつつあることなどを背景に「需給バランスは久しぶりに均衡点に向けて動いているように見える」と述べ、製造業は持続不可能なブームから持続可能な力強さに向けて減速しつつあるとし、供給業者の納入と支払い価格の動きから、ボトルネックの緩和が示されている。双方ともまだ高水準にあるため、供給面での問題は解消されていないが、市場や政策の観点からすれば進展が見られていることが重要だと付け加えた。7月は18業種のうち、機械、コンピューター・電子機器を含む17業種が上向いた。ただ、コンピューター・電子機器産業から、原材料不足で調達時間がかかっているとの報告が寄せられた。

米ISM製造業景況感指数
製造業約350社の購買担当者に対し受注や生産状況をアンケート調査により聞き取りし、月初めの第1営業日(その2日後に非製造業を公表)に公表している統計。日本の企業短期経済観測調査(日銀短観)に似た統計といえます。米主要統計の中でも最も早く月初めに発表されるため、市場関係者の注目度が高く、景気の先行指標とされています。一般に好不況の判断の境目とされる50%を割れると景気後退で、50%を超えると景気拡大と判断されます。GDPとの関連性を持たせるために2008年1月分の統計より算出方法が変更され、現在は「新規受注・生産・雇用・入荷遅延・在庫」の5項目(比率はそれぞれ20%)につき、「増加、同じ、減少」の回答結果をもとに算出する。民間調査機関13社の予測値(中心値)が前もって出回るので、リリース時にはそのギャップも重要になります。

製造業回答者の声WHAT RESPONDENTS ARE SAYING …

1Chemical Products 化学製品サプライチェーンはゆっくりと、非常にゆっくりと埋められている。水撒きホースのように上流からゆっくりと下流に流れている。噂として「通常の状態」への完全な復帰であり、年末に近づいているが状況が進んでいる。但し、輸送(機器と運転手)が資材不足より現下の非常事態である。
2Transportation Equipment 輸送機械堅調な販売が続いており、半導体チップ不足により生産数が落ちているため在庫は減っている。チップ供給基盤への負担を減らすため当社の幾つかの組立工場を遊ばせている実態がある。
3Food, Beverage & Tobacco Prod 食品・飲料・煙草不可抗力の問題、海外輸送保険料、燃料などの資材高騰による価格上昇に引き続き対処している。顧客需要は依然高い;工場を最大生産率に押し上げている。
4Fabricated Metal Products 金属加工製品堅調な操業、新しい計画、注文と立ち上げ。雇用困難が続き、候補者不足ゆえ生産と課業を埋めることができない。原材料は依然不足しており納期も長くなっている。
5Computer & Electronic Products コンピューター・電子製品景気は引き続き強い需要を示し、後退の兆候は見られない。購買調達の方は、原材料と労働力不足、物流問題により、長納期が続いている。原価増は顧客に転嫁されている。
6Nonmetallic Mineral Products非金属鉱物製品販売は昨年を良い形で上回っているが、不可抗力の状態、物流、人手不足のため、需要を満たすことは不可能だ。 当社は2022年に入るまで、この終結を待っていない。
7Furniture & Related Products家具・関連商品受注は引き続き堅調であり、経済は回復を続けている。 (資材、労働力、貨物の)インフレと入手可能性に依然苦労している。
8Primary Metals 一次金属ビジネスレベルは引き続き非常に堅調だが、従業員を見つけるのにも苦労している。労働力不足のため、注文要件の75%しか満たすことができない。
9Machinery 一般機械サプライチェーンは、様々な分類内で極端に困難な状況が続く。順番を合わせるためだけに数か月前に注文しなければならない。
10Miscellaneous Manufacturing その他の製造新規注文で非常に忙しい。材料費は上昇を続けており、供給が遅れることもある。適切な労働者を見つけることが依然、当社に大きな影響を与えている。労働力—地元で優秀な人材を求めて競争しているので労務費が上がっている。