2025年4月報告

1. 米製造業景況感指数:製造業回答者の声

Manufacturing PMI® at 49%

March 2025 Manufacturing ISM® Report On Business®

  • New Orders and Backlogs Contracting

新規注文と受注残ともに減少

  • Production and Employment Contracting

生産増加と雇用ともに減少

  • Supplier Deliveries Slowing

サプライヤー出荷遅延

  • Raw Materials Inventories Growing; Customers’ Inventories Too Low 原材料在庫増加;顧客在庫過少
  • Prices Increasing; Exports Contracting and Imports Growing

価格上昇;輸出減少、輸入増加

【解説】

米国サプライマネジメント協会(ISM)は4月1日、3月の製造業景況感指数を発表した。製造業景況感指数は49.0と、前月から1.3ポイント低下し、ブルームバーグの市場予想(49.5)も下回った。関税引き上げに伴う直接的な価格上昇以外にも、各国による報復措置などの影響も見え始めており、関税政策が企業活動に急速に影響し始めていることを示唆する結果となった。項目別では、指数の構成要素のうち新規受注(45.2、前月48.6)、雇用(44.7、前月47.6)が大きく低下したほか、生産(48.7)も基準値の50を再び下回った。在庫(53.4)と供給(53.5、注1)は基準値を上回っているが、在庫指数の上昇は「関税を回避するための一時的な措置」、供給指数については前月と同様に、関税を誰が負担するかの交渉が長引いていることや、関税引き上げを回避するための顧客からの納期短縮要請が要因とし、「需要の方向性と逆に動いている場合には、ポジティブな兆候ではない」と否定的な見解を示している。指数の構成要素以外では、仕入れ価格(69.4)が前月(62.4)から2カ月連続で大きく上昇したことが注目される。関税引き上げが実行された鉄鋼・アルミ関連製品の価格上昇のほか、現時点では引き上げ対象となっていない段ボール、銅、プラスチック樹脂についても、国外依存度を減らす動きが拡大した結果、国内価格の上昇が起きていると説明している。仕入れ価格が上昇していると回答した企業は全体の46%に上り、早いペースで投入コスト増を実感する企業が増加していることがわかる。企業のコメントでは、関税引き上げによる直接的な影響のみならず、各国による報復措置などに伴う影響への言及も増えている。具体的には、「ゲルマニウムなどの重要鉱物に対する中国の(輸出)規制措置が大規模な供給不足を引き起こしている。2025年の供給先は既に決まっており、(余剰がないことから)価格は大幅に上昇している」(輸送機器)、「カナダでの販売が鈍化し始めており、カナダ人による米国製品ボイコットが現実のものとなる可能性がある」(食品・飲料・たばこ)、「新たに導入された関税は、粗利益に重大な影響を及ぼしている。米国製品に対するカナダの新たな関税は、同国からの注文に重大な影響を及ぼしている。報復関税の脅威により、欧州からの受注と売り上げは低下している」(その他製造業)などがあり、関税引き上げに伴う二次的な影響にも注目していく必要がありそうだ。

米ISMサプライマネジメント製造業景況感指数
製造業約350社の購買担当者に対し受注や生産状況をアンケート調査により聞き取りし、月初めの第1営業日(その2日後に非製造業を公表)に公表している統計。日本の企業短期経済観測調査(日銀短観)に似た統計といえます。米主要統計の中でも最も早く月初めに発表されるため、市場関係者の注目度が高く、景気の先行指標とされています。一般に好不況の判断の境目とされる50%を割れると景気後退で、50%を超えると景気拡大と判断されます。GDPとの関連性を持たせるために2008年1月分の統計より算出方法が変更され、現在は「新規受注・生産・雇用・入荷遅延・在庫」の5項目(比率はそれぞれ20%)につき、「増加、同じ、減少」の回答結果をもとに算出する。民間調査機関13社の予測値(中心値)が前もって出回るので、リリース時にはそのギャップも重要になります。

製造業回答者の声WHAT RESPONDENTS ARE SAYING …

1Chemical Products 化学製品複雑な市場では、2025年が2024年をやや上回ることを見越した買いが急増した。しかし、3月には全ての市場で減速が見られ、潜在的な危機を持ちこたえる恐怖と在庫維持が見られた。  
2Transportation Equipment 輸送機械深刻な供給不足がサプライチェーンの継続性に影響を与え続けている。ゲルマニウムのような緊要鉱物に対する中国の規制は、大規模な不足を引き起こし、その結果、2025年に必要とされる全ての供給が既に想定されており、当然のことながら、その結果、大幅な価格上昇が起きている。関税は、現時点では供給確保に小さな波紋を投げかけており、不確実性のために発注条件が狭まっている。航空宇宙・防衛は、これまで非常に回復力が強かったが、対外軍事販売で外国の報復措置を含む政府の政策により、中長期的な需要に疑問符がつき始めている。
3Food, Beverage & Tobacco Prod 食品・飲料・煙草カナダでの売上が通常より伸び悩み始めており、カナダ人が米国製品をボイコット(不買運動)する懸念が現実のものとなる可能性がある。
4Computer & Electronic Products         コンピュータ・電子製品継続的な関税と価格圧力への不安から、顧客は注文を引き揚げている。
5Machinery           一般機械景況は急速に悪化している。関税と景気の不透明感が現在のビジネス環境を厳しいものにしている。
6Fabricated Metal Products        金属加工製品新規受注は増加しており、予想以上に好調である。当社の顧客は、予想される関税と関連コストの上昇を先取りするため現在価格で在庫を積み増ししようとしているのだと思われる。この需要の急増は短期間で終わると期待している。
7Electrical Equipment, Appliances & Components      電気機器・家電・部品需要は昨年と変わらず安定している。需要増加の兆候はない。関税の影響と緩和策は毎日の話題である。
8Primary Metals    一次金属弱気な市場心理と関税の適用とコストは、過去1ヵ月間の議論を支配しており、明確な道筋が決まるまでは、引き続き市場を支配するはずだ。全体的な懸念は、価格上昇によって需要破壊が起こるかどうかである。
9Miscellaneous Manufacturing その他の製造業新たに導入された関税が粗利益に大きな影響を与えている。カナダの米国製品に対する新関税は、同国からの受注に大きな影響を及ぼしている。報復関税の脅威により、ヨーロッパからの見積依頼と売上が減少している。
10Petroleum & Coal Products 石油・石炭製品世界的な経済不安は、石油・ガス事業に大きな影響を与え始めている。米国の政権交代もさることながら、中国、インド、欧州の経済が次のサイクル景気循環の谷の駆動源となっている。